次世代エンジンを積んだ試作車の走りは上々
このスカイアクティブ-Xを搭載したモデルを、マツダはどのくらいの価格で売るのか。スカイアクティブエンジンの開発を手がけてきた人見光夫・常務執行役員は値付け感について、
「商品には性能だけでなく格というものがある。ディーゼルエンジンやハイブリッドであれば高い金額を支払ってもらえるが、圧縮着火とはいえガソリンエンジンをそれらと同じ価格でというわけには行かないでしょう。ディーゼルよりは安く売らざるを得ないでしょうし、コスト的にそれは可能だと思っています」
と語る。そのエンジンもさることながら、試作車のドライブで印象的だったのは、むしろ車体やシャシー(サスペンションなど走行系の部分)のほうだった。
エンジンの効率はいわば縁の下の力持ちのようなもので、運転の仕方に対する実燃費を見るなどしたときに初めて実感できるもの。それに対し、ボディ、シャシーのほうは走行性能として、その場でダイレクトに体感可能だ。
現行アクセラのものから第2世代へと進化する次世代スカイアクティブシャシーで作られた試作車の走行性能は至って素晴らしいものだった。
ハンドル操作に対するクルマの応答は良好で、車線変更や危険回避の動きをみるダブルレーンチェンジ(車線変更し、その後すぐに元の車線に復帰する)でもクルマはぐらついたりせず、とても綺麗な軌跡を描く。現行アクセラも悪くはないが、それより一歩も二歩も秀でている。
が、第2世代スカイアクティブシャシーが驚異的に思えたポイントは運動性能ではなく、静粛性の高さであった。
現行アクセラも昨年の大型改良によって初期型に比べるとかなり静かなクルマになったのだが、新ボディ&シャシーが生む静粛性は、それとまったく次元が異なるレベル。スペックの高いタイヤを履いているにもかかわらず、ロードノイズや風切り音はきわめて高いレベルで遮断されており、100km/h超のスピードでも室内は驚異的に静かであった。
コンパクトクラスで静粛性が高いモデルの代表格はフォルクスワーゲン(VW)の現行「ゴルフ7」だが、試作車は発売まで約2年という今の段階ですでにゴルフを大きく凌駕しているように感じられた。これからむしろどういう音をドライバーに選択的に聞かせるかという感性チューニングがテーマになりそうなくらいであった。
室内騒音は大きく分けて、車体やガラスを通過して室内に聞こえてくるもの、車体の隙間から入り込んでくるもの、車体構造を伝わってくるものの3種類がある。マツダのエンジニアによれば、新ボディ&シャシーは騒音侵入の要素すべてについて徹底的に原因究明や解析を行い、対策を施した設計となっており、防音材に頼らず静粛性の高さを達成したのだという。
乗り心地についてはおおむね良好なものの、路盤の継ぎ目のような衝撃の入力ではブルつきが残るなど、まだ煮詰めの余地が残ってはいた。が、試作車は2年後の仕上がりを期待させるに十分なパフォーマンスと商品力を有しているように感じられた。