8月に技術発表を行ったマツダの新エンジン「SKYACTIV-X」
マツダはリーマンショック以降、大量生産一辺倒から生産台数を絞り、そのぶん商品力をベースとした付加価値を上げるという戦略に転換した。2012年にクロスオーバーSUVの初代「CX-5」で「魂動デザイン」と同社が命名した躍動感のあるデザイン文法を適用。以後、内外装の質感向上と、ドライバーや同乗者が乗っているだけでクルマの楽しさを実感できるような走行特性を重視したクルマ作りで存在感を上げようとしてきたのである。
そのマツダにとって弱点となっていたのは、高付加価値分野では必然的に高いレベルで要求される快適性や「このクルマは質がいいな」と顧客にトータルで感じさせる動的質感の高さである。
現在のマツダ車はボトムエンドの「デミオ」からDセグメントセダンの「アテンザ」、海外向けSUVの「CX-9」まで、プレミアムセグメントと呼ばれる高級車マーケットのモデルを彷彿とさせるような仕立てを持っている。
内外装を素晴らしくすることは顧客を引き付ける強力な武器になるが、一方でそれをやると、実際にクルマを走らせたときの動的質感について顧客に厳しい目でチェックされることにもなる。現行のマツダ車は、モデルによって程度の差はあるが、見た目はプレミアムだが走らせてみるとノンプレミアムの域を出ないというギャップがある。
騒音・振動はマツダ車の商品力向上を阻害する最大ファクターのひとつだったのだが、次世代スカイアクティブシャシー車のテストドライブの実感にかんがみて、おそらくマツダの次世代モデル群は、その苦手分野を一気に克服してくるものと予想される。
多くのメーカーが新興国戦略で台数と利益の確保に腐心するなか、先進国市場向け商品を主軸とすることにこだわってきたマツダ。東京モーターショーのマツダブースに飾られるコンセプトモデルは、きっとそのこだわりが目いっぱい盛り込まれたものになっていることだろう。