返す時期を決めていない使用貸借で、使う目的を定めていなかったときは何時でも返還請求できますが、上述の前提から子供の学校や居住環境継続の目的で使用を認めたのですから、これに当たらないので立ち退く必要はありません。
ですが「契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時」または「(その目的で)使用及び収益をするのに足りる期間を経過した時」に貸主は返還を請求することができるとされています。なので子供の通学等の支障がなくなると、住み続けることはできません。
さて、マンションが夫婦の実質的共有財産であれば、離婚時のローン残高を控除した財産価値が財産分与として清算の対象になります。財産分与の権利は離婚後2年で時効ですから、注意してください。ローン残高が不動産価格を上回るオーバーローンであれば無意味ですが、ある程度の価値がある場合には、清算を求めることも検討課題になると思います。ただし、売らないと清算できない場合には、必然的に明け渡しせざるを得なくなります。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年11月3日号