兵庫県尼崎市に、女友達と近居をする、70~80代の7人グループ『個個セブン』がある。彼女たちは2008年以来、約9年間、一棟の分譲マンションの一室をそれぞれ購入し、定期的に“見守り”をしながら暮らしている。
実はこの7人、長年の親友…ではなく、近居のために集結した同士なのだ。
発起人は、NPO法人代表の田矢きくさん(82才)。そして古くから田矢さんの友達だった元NHK解説委員の村田幸子さん(76才)と社会福祉法人の元理事長・市川禮子さん(79才)の3人が中心となり、それぞれ友達やその友達に、近居仲間を呼びかけた。そして集まったのが、コピーライターの一ノ坪良江さん(72才)、元新聞記者で今はジャーナリストの川名紀美さん(81才)、心理カウンセラーの安田和子さん(77才)、着物雑誌の編集者・清田のり子さん(81才)だった。
取材日には、田矢さん、一ノ坪さん、安田さん、川名さんの4人が出迎えてくれた(以下、発言部分、敬称略)。
◆「初めまして」から「友達」になるまで
友達と近居をしようという話が持ち上がったのは今から13年前。その間、メンバーは入れ替わり、理想とする家探しも難航。今の7人で近居を始めるまで約5年かかった。
田矢「2005年にメンバーが固まり、舵を切り始めたのよね」
川名「それからさらに4年間、どう暮らしていくかを話し合いました。お互いのことを知らなかったので、考え方をすり合わせ、親しくなるために、一緒にご飯を食べたり、旅行をしたり…」
安田「4年かけて互いの人柄や価値観をわかり合っていったんです」
◆高齢の引っ越しは思った以上に大変
交流を深めつつ、家探しも同時に行った。初めは戸建てを共同購入し、みんなで住むなどの案も出たが、全員の条件を照らし合わせた結果、駅から近く交通の便がよい、新築の分譲マンションに決まったという。
しかし、大変だったのはそこからだった。当時のメンバーは60~70代。引っ越しが思った以上に体にこたえたのだ。
川名「終の住みかに移り住むなら、体が動くうちに、というのが実感。私は60才でしたが、詰めるにも、荷物の処分にも一苦労」
安田「私の場合、終の住みかのつもりで別の家を新築した直後にお誘いを受けたものだから、一度は遠慮させてもらったんです。でも2年後に脳梗塞に。私は近くに家族や親戚がいないので、このままでは孤独死するんじゃないかって怖くなったんです。結局半年間はこのマンションで暮らし、残り半年は新築した家で暮らすという“二重生活”を続け、昨年ようやく完全にこちらに居を移しました」
一ノ坪「その点私は、前の家に愛着がなかったので、気持ちの区切りはつけやすかったですね。ひとり身ですし、近所づきあいもなかったから、身軽でした」
◆介護はしないが見守りはするルール
メンバーを決め、家を探し…。ここまででかなりの大変さがうかがえるが、生活が始まると順風満帆。この9年、大きなトラブルがないのは、事前に決めたルールのおかげだという。