田矢「友達との近居は、もたれ合わずに共に暮らしていく『自立と共生』が大事だと思います。だから、身体介護はしないと決めていました。任せられることはプロに任せましょうと。ただ、お互いの“見守り”はします。合い鍵を持ち合って、メンバーの誰かが旅行中は植木の水やりなんかもやります」
安田「メールもほぼ毎日していますね。数日応答がなければ“変だな”と気がつきますから」
一ノ坪「メールの内容も、業務連絡から“検診結果に問題ありませんでした”“それはよかったね”といった他愛ないものまでいろいろ。人に言うだけで心が軽くなることってありますよね」
川名「私も友達が近くにいることで救われました。つい先日も、深夜の1時過ぎに、激しい頭痛に襲われたんです。“まさか、くも膜下出血!?”と思って田矢さんに電話しました」
田矢「ハア、ハアという苦しそうな息遣いが電話口から聞こえて、すぐに1つ上の階の川名さんの部屋に行きました」
川名「それで、少しそばにいてもらったんです。30分経っても頭痛が治まらなかったら救急車を呼んでもらおうと。幸い大事には至らなかったのですが、夜中に1分で駆けつけてくれる近居のありがたみを実感しました。しかも、朝起きたら、朝食まで作ってくれて…」
田矢「そのための近居ですからね、お互い様ですよ(笑い)」
◆仲間の病気に思う自分の身の振り方
近居を始めた当初、みんなここが終の住みかだと思っていた。しかし、9年経った今、また違う思いが胸をよぎるという。
川名「今、メンバーの1人が施設で闘病中なんです」
終の住みかに施設という選択肢が見えてきたのだ。
一ノ坪「川名さんは車椅子になっても頭がしっかりしている間はヘルパーさんに来てもらって、極力ここの部屋に住みたいと言っていましたね」
川名「ええ。私たち個個セブンは、習い事の成果を年に1度発表し合ったり、サロンや読書会などを開催しているんです。それって、デイサービスのようなものだと思っています。人と交わることで、脳が活性化して生活の質を上げている。だから、動けるうちはわざわざ施設に入らなくても、ここでみんなと交流していければいいかなと思っています」
一ノ坪「私もそれに賛成。でも、もし自分がひとり取り残されたら施設に入るかも。友達がいるからここにいるわけですから」
川名「最終的に同じ施設に入るかわからないけれど、情報を共有しながら最善策を話し合っていくことになるわね」
晩年は、家族やパートナーではなく、女友達と近居する。そのメリットは、情報や将来への思いの共有、そして、居心地のいい人たちとコミュニケーションを取りながら暮らせること。そんな幸せの選択肢もありかもしれない。
※女性セブン2017年11月9日号