TMファンは仲間だと思ってしまうので、小渕優子が好きだ。一九九九年、TMは小渕恵三首相の依頼を受け麻薬・覚醒剤撲滅キャンペーンのテーマ曲『Happiness×3 Loneliness×3』を制作。きっかけは、学生時代よりTMファンの娘からの進言だったそうだ。
翌年の沖縄サミットでは、小室哲哉プロデュースで安室奈美恵が歌った『Never End』がテーマ曲となる。沖縄出身の歌姫・安室奈美恵がこれ以上ない適役であったのはもちろんだが、小渕首相と小室哲哉は早稲田大学で学んだ者同士、理解し合えるところがあったと思われる。
鳴滝は「二十歳までに幕下に上がって、二年以内に十両に上がりたい」と具体的に語っている。抜け目のないレコード会社がTMの化粧まわしを贈呈し、懸賞金もかけてくださるに違いない。
デザインは『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌が収録されたアルバムのジャケット以降、何度もTMをイラスト化しているアニメ制作会社ガイナックスでどうかとまずは思ったが、金銭問題で複雑な状況らしいので難しいかもしれない。しかしお目当てはすでに退社した美術監督・キャラクターデザイナーの佐々木洋氏なのだから、依頼できるならうれしい。
私は、小渕優子が女性初の内閣総理大臣になったらいいなと思う。その二〇三X年、鳴滝は三十代半ばになっている。現役であってほしい。鳴滝が幕内最高優勝する千秋楽を想像してみる。内閣総理大臣杯の授与は、土俵上では行われない。女性は上がることができないから。土俵の下に特別に設けられた台から大きな杯を持ち上げようと力む小渕首相と、はにかみながらそれを受け取る鳴滝。鳴滝は百七十五センチと大柄ではないが、小渕首相と並ぶととても大きく、たくましく見えるだろう。
一九五七年、一九五八年生まれのTMネットワークのメンバーは、来年で全員が還暦を迎える。その頃には生きていない可能性もなくはない。鳴滝の勇姿を見届けたあと、空に向かって「あなたたちが勇気を与えた若者がこんなにも強くなりましたよ」と報告したい。
※週刊ポスト2017年11月10日号