生命活動の源である心臓は「ANP」(心房性ナトリウム利尿ペプチド)というメッセージ物質を放出する。この物質を世界で初めて発見した国立循環器病研究センター・研究所担当理事の寒川賢治氏がいう。
「血液量が増えたり血圧が上がることで心臓に負担がかかると、心房細胞からANPが放出されます。腎臓がこれを受け取ると、尿の量を増やして血液を減らし、心臓の負担を軽くします。またANPが血管に作用すると血管が拡張して血圧を下げる作用もある」
ANPのもう一つの重要な働きは「血管の保護」だ。
「心臓から放出されたANPには、炎症で傷んだ血管を保護・修復する働きがあります。血管内に炎症があるとがん細胞が付着しやすくなるため、ANPにはがんの転移・再発を防ぐ効果も期待されている」(寒川氏)
◆臓器はもはや単なる「部品」ではない
一般的には「臓器」とは捉えられていない体組織も、Nスぺは臓器間ネットワークにおいて重要な位置を占めると紹介した。重量にして人体の7割を占める「脂肪」と「筋肉」だ。
脂肪が放出する重要なメッセージ物質が「レプチン」である。東北大学大学院医工学研究科の永富良一教授が指摘する。
「食事をして脂肪細胞に糖や脂肪が取り込まれるとレプチンが放出されます。これが血管を通じて脳の視床下部に届くと、『もう食べなくていい』という指令が出て食欲が抑制されることがわかっています」