一方、三人会は「個性の激突」が値打ち。9月28日の「J亭落語会 白酒・三三・一之輔 スペシャル3人会」(虎ノ門・JTアートホール)は月替わり独演会「J亭落語会」のレギュラーが一堂に会したもの。人気者が顔を揃えた豪華な一夜で、春風亭一之輔が『お見立て』、柳家三三が『高砂や』、トリは桃月庵白酒で『火焔太鼓』。現代落語の最前線を堪能できた。
翌29日に観た「傳志会」(霞ヶ関・イイノホール)は立川志の輔・立川談春・立川生志・立川雲水の四人会で、今年3月第1回、6月の第2回に続いてこれが3回目。雲水『竹の水仙』、談春『紙入れ』、志の輔『みどりの窓口』と来て、トリの生志が独自の演出で磨き上げた『柳田格之進』で見事に締めた。
娘の心情にスポットを当てた『柳田格之進』は「立川流に生志あり!」と見せつける一席だ。会場の広さ(500席)も手伝って雰囲気としてはいわゆる「ホール落語」に近いが、内容は完全にチームプレー。志の輔・談春が脇役に廻っているのがなんとも贅沢だ。こういう四人会は新鮮に思えた。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『僕らの落語』など著書多数。
※週刊ポスト2017年11月24日号