「おちるという文字は絵なんです」(鳥飼氏)
『先生の白い嘘』をはじめ、一貫して女性の立場から作品を描いてきた鳥飼氏。今回、女子高生を描くにあたってもその視点は変わらないという。
「描き手として、セックス表現がどうのではなくて、自分の性をどこに位置して描いているかが大事だと思うんです。最新話では、自分の性を邪魔だと感じている女の子の話を描きました。自由な男の子たちのグループが羨ましくて加わりたいんだけど、自分は性を超えることができなくて苦しむ。
私自身、高校生のときそうだったんです。昔、夜中に公園で騒いでる男の子グループに誘われて、ドキドキしながら公園に行って一緒に過ごしたんですけど、むちゃくちゃ居心地が悪かった。憧れはあるんだけど、自分は女だからどの立ち位置にいればいいのか分からなくて。男子みたいに素っ裸で踊るわけにもいかないし(笑)。そういった葛藤をこの作品では伝えたい」
今作では作品に合わせてこれまでとは違って「鉛筆画」で描いている。本人は「最初は半分、サボりたいくらいの気持ちだった」と笑うが、結果としてそれが10代の荒々しさや未成熟な雰囲気を見事に表現し、作品の大きな特徴となった。
「いざ鉛筆で書き始めると、背景から何から全てアシスタントなしで描くので、仕事量的にダントツでキツかったです(笑)。でも、そのぶん生っぽさみたいなものを伝えられているのではないかと思います。
鉛筆で描くとデッサンぽくなるので、顔のアップとかを描くと、『漫画では見たことないような迫力ですね』って言われたりしました。それって褒められているのか、けなされてるのか微妙な気持ちですけど(笑)」
そうした中で、「文字の重要性にも気付いた」と話す。これまでは、台詞の多い作品が多かったが、「この作品はムダな文字を少しでも減らす作業だった」。文字を減らすことで、逆に言葉の与える影響を実感したという。
「この作品は1話のページ数があまり多くないので、限られたコマの中でとにかくインパクトを出さなきゃいけない。『最も伝えたいことは何なのか』を考えた結果、『言葉は絵なんだ』という答えに辿り着いたんです。