スポーツ

日馬富士暴行疑惑に見る角界文化と世間の常識の埋まらぬ溝

角界暴行疑惑 真相解明ある?

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、連日報道されている日馬富士の暴行疑惑にクローズアップ。

 * * *
 10月の鳥取での秋巡業中に開かれたモンゴル出身力士らの宴会で、横綱日馬富士が、前頭八枚目の貴ノ岩に暴行。貴ノ岩は「右中頭蓋底骨折や髄液漏れの疑い」という診断書が出され、九州場所を初日から休場した。原因は酔った日馬富士が貴ノ岩の態度に対し説教、その時に鳴り出したスマホを貴ノ岩が操作したことに激高したという。

 カメラの前で謝罪した日馬富士は3日目から休場。福岡と東京を往復するなどせわしなく動き、身体を小さく縮めるようにうつむいて歩く姿を追うメディアでは、連日、様々な情報が飛び交っている。それにしても、次々と出てくるのは日馬富士の酒癖の悪さだ。

 人によってお酒の酔い方は様々だが、量によって急性の症状が現れることを酩酊といい、その代表的な酩酊分類に「ビンダーの分類」というのがある。この酩酊分類によると、お酒を飲むと人が変わったように暴力的になって興奮してしまうのを、複雑酩酊と呼ぶ。酔ってくると抑制がはずれて気分が刺激されやすく、激しい興奮が起こり、それが抑えきれず、ちょっとしたことにでも過剰に短絡的に反応する状態だ。この時は、その人が抱えている複雑な感情意識が現れやすいといわれる。この状態の持続時間は長いが、状況に対する理解や意識は保たれている。日馬富士自身も酒癖の悪さは自覚していたはずだ。

 稽古後に待ち構えたレポーターたちに囲まれた横綱は、「親方が…」と言うと、硬い表情のまま前を向き、口をつぐんで歩き出すが、「反論することは?」と聞かれると視線を下に落とした。それは、自分がやってしまったことへの罪の意識だけでなく、手を出したという事実があったからだろう。

 九州場所について聞かれると、手を腰の辺りに回して足を止めた。この行動は、覚悟を決めここで口を開くしかないと思ったからかもしれない。だが同時に、自分がやってしまったこととはいえ、報道陣にあまり騒がれたくないという気持ちもあったのだと思う。

 貴ノ岩のケガについてポツポツと切れ切れな言葉を絞り出すようにして、謝罪の言葉を口にした日馬富士。関係者に迷惑をかけているという思いが強いのだ。だが、そこに貴ノ岩に対する直接的な謝罪はなかった。自分が一方的に悪いのではない、そんな思いがどこかにあるのだろうか。「これ以上のことは…」と言葉を濁すと、口をしっかりと閉じた。再び歩き出した日馬富士だが、うつむいたまま口の端を噛んでいた。自分の酒癖の悪さとやってしまったことを悔やんでいるのだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト