難民と聞くとオンボロ船ではるばる海を越えてやってくる姿をイメージしがちだが、そのように命からがら日本にたどり着く難民は16年中で152人。わずか1.4%に過ぎない。残りの98.6%は日本にいながら難民申請する。その多くは、実習生のほか、旅行などの短期滞在、留学といった正規の在留資格で入国した後、難民申請を行っているのだ。もちろん、入国後に母国が政情不安になったりして帰国すると命に危険が及ぶため難民申請を行う「真正難民」もいるが、日本での就労を目的とした“偽装難民”も多い。
難民認定は申請しさえすれば、たとえ認められなくてもずっと合法的に働くことができる制度だ。
実習生や留学生などとして滞在中、来日後6か月以内に申請すれば、「特定活動」という滞在資格を得ることができ、申請6か月後から就労可能。以前は生活困窮者に限られていた「特定活動」だったが、2010年に制度が簡略化され、一律に認められるようになった。
実習生には3~5年という期限があり、留学生には週28時間労働という縛りがあるが、「特定活動」にはそうした制約はない。しかも申請回数には制限がないから、却下されても申請し続ければこの「特定活動」資格を維持できる。極論すれば、何らかの在留資格で日本に入国し6か月以内に難民申請さえすれば、永遠に日本で働くことができる仕組みとなっているのだ。
これが就労目的の偽装難民に利用される所以だが、彼らの申請を助け仕事を斡旋する“難民ビジネス”に手を染める仲介者が跋扈するようになり、口コミでこうした情報が広まったため、難民申請が激増していると思われる。
2016年の難民申請者数1万901人のうち中国人は156人と少ないが、今後の動向を注視する必要があろう。
【PROFILE】坂東忠信●1967年生まれ。1986年、警視庁入庁。機動隊員、刑事などとして勤務。警視庁本部では主に北京語通訳捜査官を務め、中国人犯罪の捜査活動に多く従事。『寄生難民』『在日特権と犯罪』(いずれも青林堂刊)ほか著書多数。
※SAPIO2017年11・12月号