今回、龍馬の師であり、幕臣ながら江戸無血開城を実現するなど維新に貢献した勝海舟は“教科書に引き続き掲載すべき用語”に含まれていた。その一方で、龍馬の他にも、維新志士の理論的支柱となった思想家である長州藩士・吉田松陰が“教科書への掲載は必要なし”と判断されている。龍馬の末裔・匡弘氏は、同時代の英傑に“線引き”がなされることに憤る。
「松陰だって、思想は過激だったかもしれないが、自分が信じた正義のために尽くした男です。そうした人間的魅力も教育の中で伝えていってほしいのに……来年の明治維新150年を前に、水を差された気分です」
波紋を広げる今回の提言について、歴史作家で多摩大学客員教授の河合敦氏が解説する。
「精選案は、“暗記量ではなく歴史的な思考力を問うべき”という国の歴史教育改革の方針に沿ったものと言えるでしょう。27年間高校の教員を務めた立場から言えば、限られた時間のなかで多くの用語や人物を詰め込まざるを得ない状況になっているのは確かです」
※週刊ポスト2017年12月8日号