ビジネス

なぜトヨタは先端技術を持ちながら純EVを量産しないのか

 特に印象的だったのは駆動用モーターと出力制御のためのパワーコンディショナーで、初代とは比べ物にならないほどの小型軽量化がなされていた。第1世代プリウスから20年の間に着々と進化を遂げてきたトヨタの技術的なアドバンテージは依然として大きいと思わせるに十分だった。

 筆者は今年の春に、充電可能な大型電池を積み、数十kmならEVとしても運用可能なプラグインハイブリッドカー、プリウスPHVで650kmほどドライブしてみた。そのドライブの中でとりわけ驚かされたのは、EVとしてのエネルギー効率の高さだった。

 神奈川の相模原で容量の80%まで急速充電を行い、ところどころ混雑した国道246号線を通って東京の靖国神社近くまで、47.9kmにわたってEV走行オンリーでのドライブにトライした。

 エアコンONで交通の流れにしっかり乗って走るという、省エネ走法とはほど遠い普通の乗り方であったが、果たしてプリウスPHVは一度もエンジンを使うことなく、電気だけでその区間を走り抜いた。

 市街地および郊外路の平均電力消費率は1kWh(100ボルトで1000Wのドライヤーを1時間使うのに相当する電力量)あたり約10km。この数値はEVドライブとしてはきわめて良い値だ。

 このところフォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーなどのドイツ勢がプラグインハイブリッドで押してきているが、同じような重量のモデルで同じように走った場合、電力消費率では3割以上プリウスPHVにビハインドを取っている。ドイツ勢はじめライバルもこれから電動化技術のレベルをどんどん上げてくるであろうが、現状ではトヨタはドイツ勢に影も踏ませていないと言える。

 しかも、プリウスはライバルと異なり、パワーが必要な時には発電機とモーターを結合して大出力を得る機構を使っている。この方式は、駆動時にパワー半導体を2個使うため、熱損失は大きくなるのだ。今、モーター1個のEVを作り比べれば、その差はさらに広がる可能性が高い。

 ことほどさようにEVの技術を豊富に蓄積してきたトヨタが、なぜ純EVを本格的に量産しなかったのか。トヨタ関係者いわく「現状ではお客様が買いたくなるような性能のものを買いたくなるような価格で作れる技術水準に遠く及んでいないから」であるという。

 これは、商売としてはある意味、当たり前の考えだ。今日、EVが大いに持てはやされ、すぐにでもEVの時代が来るというイメージが醸成されているが、世界の自動車販売に占める割合はごく低い。

 売れない理由は明白。バッテリーの性能や耐久性が低いことがネックとなって航続距離が短く、充電時間が長いこと、そして何より高価なことだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン