こんな“悲劇”もある。今春、他界した磯部敏郎さん(仮名・享年79)は亡くなるまでの数年間、虚血性心筋症と糖尿病、腸閉塞の持病を抱え、入退院を繰り返す日々を送っていた。

 そんな磯部さんは昨年末、「次に具合が悪くなっても病院には行かない」と家族に在宅死を宣言した。

「ただ敏郎さんは奥さんや同居する息子さん夫婦と折り合いが悪く、家で満足な介護を受けられないまま、寂しく息を引き取りました。亡くなる少し前、敏郎さんは“在宅死を願ったけど、これじゃ『家庭内孤独死』だ”と寂しそうに話していました」(最後まで親交のあった親族の1人)

 また、自分の介護で憔悴する家族の姿を見ることで「迷惑はかけられない。家族のためにやっぱり病院に行く」と言って、自ら在宅死を諦めて病院や施設に移る例もあるという。それでも前出・小笠原医師はこう言う。

「今ではNPOや民間企業などが連携して24時間体制の見守りサービスを提供している自治体も多いので、独り暮らしでも穏やかな在宅死を実現できるケースが増えてきています。

 また、在宅死はお金がかかると思われがちですが、公的な医療保険と介護保険を併用すれば、ほぼ保険の範囲内でサービスを受けることも可能です。状況や考え方の違いによって在宅死の難易度は変わりますが、恐れる必要はありません」

 在宅死の「理想と現実」のギャップは除々に埋まりつつある。

※週刊ポスト2017年12月22日号

関連記事

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン