冬に旬を迎える「かんぱち」はアジ科ブリ属の一種で、同じブリ属のひらまさ、ぶりとともに「ぶり御三家」と呼ばれる。「かんぱち」という名は、口元から目を通って背の第一背びれ辺りまで黒っぽい帯状の線が左右対称にあり、かんぱちを前方斜め上から見ると八の字に見えるのが由来とされる。
かんぱちはぶり同様、成長とともに呼び名が変わる“出世魚”。関東では、ショッコ→シオゴ→アカハナ→カンパチ。関西では、シオ→カンパチ。大成したかんぱちは、ほぼ刺身専用といってもよい高級魚である。
かんぱちには多価不飽和脂肪酸のDHAとEPAが豊富に含まれ、脳の活性化、動脈硬化・心筋梗塞はじめ生活習慣病の予防効果が期待できる。悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす働きもある。
また、アルコールを分解するナイアシンをたっぷり含有。アセトアルデヒドという二日酔いを起こす成分分解を助ける補酵素の働きもある。年末年始の酒席では、かんぱちの刺身を肴リストに組み込んだ方がよさそうだ。
家庭料理研究家の松田美智子さんはこう話す。
「脂がのっていても口当たりはさっぱりしていて、お値段も手頃。クセがないので、とても親しみやすいお魚です。昆布締めにするとうまみがいっそう深まり、風味も極上、熱燗にぴったりです。ただし、締めるのは1時間ぐらいが最適。長時間放置すると、昆布のヨード臭がかんぱちを凌駕しますから、ご用心を」
【かんぱちの準備】
かんぱちは天然ものはほんのり桜色、養殖ものは脂がのって白っぽい色をしている。鮮度がよいとコリコリとした食感で、ひと晩、ふた晩と経つとうまみは増すが、歯ざわりはやわらかくなる。新鮮なものは薄切りに、ひと晩経ったら厚切りにするとよい。
かんぱちなど、比較的厚みや弾力がある刺身用さくを切る場合は、さくの両側をキュッと軽く指で押さえながら切ると、身が逃げずに切りやすい。よく切れる包丁を使うことが肝要だ。
■『かんぱちのカルパッチョ』のレシピ
【1】刺身用かんぱちのさく100gは5mm厚さのそぎ切りにし、軽く塩をして冷蔵庫に15分置く。
【2】玉ねぎ1/2個は横に薄切りにし、冷水にとってから平ざるにあげて水気を切っておく。
【3】小さなボウルに赤ワインビネガー大さじ1と1/2、オリーブ油大さじ3、塩小さじ1/3、白こしょう少量をよく混ぜ合わせる。
【4】かんぱちを皿に盛り、キッチンペーパーで水気を押さえた玉ねぎをあしらい、【3】をかける。
撮影/鍋島徳恭
※女性セブン2018年1月1日号