サイコパスの凶悪犯罪者を矯正させることは可能か──。長年議論になってきたこの問題について、筑波大学人間系教授で犯罪心理学者の原田隆之氏が語る。

「海外ではさまざまな治療プログラムが実施されていますが、完全に矯正させるのは至難の業だと思います。

 というのも、うつ病や強迫性障害などの精神疾患と違って、彼らは自分を病だと思っていないからです。これまでの人生でつらい思いをしたわけでもなく、悩んでもいない。治療意欲自体がないんです。例えば性犯罪者治療の場合、性衝動を抑える薬を用いることがあるのですが、それをのみ続ける動機を本人が持ち得ない。

 サイコパスの殺人犯となると、嘘をついたり表面を取り繕ったり、うまく改心したふりをするケースも多い。女性8人を殺害し、戦後最悪のシリアルキラーといわれる大久保清は、連続殺人事件を起こす直前まで別件で服役しており、刑務所では模範囚でした。しかし、仮釈放になるや否や被害者の物色を始めています」

 日本の犯罪史上に残るシリアルキラーを見ると、前科がある人物ばかりである。“陰獣”と呼ばれ、1945~1946年にかけて女性7人を強姦して殺害した小平義雄は、過去に殺人の前科で服役しており、出所後同じ罪を犯している。

 2001年に大阪府池田市の池田小学校で児童8人を殺害した宅間守も、強姦や傷害で複数の前科を持っていた。

 2016年、相模原の障害者施設で19人の入院患者を殺害した植松聖は、「自傷他害の恐れあり」として、事件直前まで措置入院(行政による強制入院)の処置が取られている。

 犯罪を繰り返しながら自分を省みることなく、他者が矯正もできない。そんな危険人物がどこに潜んでいてもおかしくない現代社会。善良な市民に対応策は存在するのか。脳科学者の中野信子さんは、過去にこう書いている。

《何かおかしい、と思ったら、その人がいる場所に近づかないこと。あからさまに避けると「正体がバレた」と思って攻撃してくる危険もあるので、何か理由をつけ、フェイドアウトしていくのがおすすめです》(『婦人公論』2017年9月12日号)

 仕事やつきあいなどの関係でどうしても縁が切れない場合は、《できるだけ「ドライな関係」を築く》(同前)より他ないという。

 サファリック氏もこう話す。

「どう見ても危ない人間だと感じたら、引っ越しをしてでも逃げるしかない。命はお金に代えられないのだから」

「君子危うきに近寄らず」が最良の選択なのかもしれない。

※女性セブン2018年1月4・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
「ピットブル」による咬傷事故が相次いでいる(左・米軍住宅参考画像)
《沖縄で相次ぐピットブル事件》「チェーンを噛みちぎって引きずった痕も…」自治体が狂犬病の予防接種すら把握できない“特殊事情”「米軍関係者の飼い犬だった」 
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルの飛行機でスヤスヤ》佳子さまの“寝顔動画”が拡散…「エコノミークラス」に乗った切実な事情
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン