国内

肥大する若年層の「死にたい」願望 政府のSNS対策では不充分だ

SNSで「死にたい」とつぶやく若年層は多い

 自殺対策基本法が公布、施行されてから10年以上が経つ。年間3万人を超えていた自殺者数は減ったが、女性や若者の死因上位にはいまも自殺がある。スマホやSNSの普及によってコミュニケーションのとりかたが急速に変わりつつあるいま、自殺願望だけでなく、死にたいと考えてしまう希死念慮を持つ人たちを、どのように生きることへ自然に繋げられるのか。ライターの森鷹久氏が当事者との対話から考えた。

 * * *
 2017年12月、政府は神奈川・座間市のアパートで男女9名の遺体が見つかった事件を受け「再発防止策」をまとめた。事件は、SNSで自殺を仄めかす投稿から始まっていたことから、警察当局が投稿者本人を特定するなどの自殺を未然に防ぐ、そそのかす書き込みなどの削除徹底に向けたパトロール強化などが盛り込まれている。しかし、果たしてこれが、本質を得たものだと言えるのか。

「悪く言えば“監視”、よく言えば……いや、何か良いことってあるんでしょうか?」

 座間の事件で逮捕された容疑者と、SNS上でやりとりした経験がある、関西地方に在住の女子大生・リコさん(仮名・20代)は、政府や当局が示す「対策」に疑問を呈する。「死にたい」「自殺したい」とつぶやくたびに見知らぬ人からの接触があると、SNSでも本音をつぶやけない雰囲気が強くなるというのだ。そして、SNS上で自殺を仄めかすユーザー達は居場所をなくし、彼ら、彼女たちがより見えづらくなるのではないか。そう考えているのだ。

 実は筆者も、座間事件の発生時にネット上で「自殺希望」とつぶやいていた複数のユーザーに対して行った聞き取りで、同じような「見解」、さらにはあまり明るくない「展望」を聞いていた。

 そもそも、座間事件の容疑者自身が供述していた通り、殺害された被害者はもちろん、ネット上で「死にたい」とつぶやいている人々は、本当に今すぐに死にたい、消えてなくなりたいと思っているわけではない、という事実がある。「死にたい」というつぶやきは、思いの吐露であり、痛みや辛さを少しでも解消することであり、同じ仲間を見つけることであり、自己の「生」そのものを確認することでもあった。

 彼女たちは具体的な問題があって死にたいと考える「自殺願望」というよりも、漠然と死を願う「希死念慮」にとらわれていたのだろう。

「かまってちゃん、面倒で気持ち悪い人間とか……。事件の後、SNSを通じて嫌がらせのようなメッセージがたくさん送られてきました。中には、会って肉体関係を結ぼうとしているような人もいた。最初は我慢していましたが、監視までされるようになるなら……アカウントを閉じました。辛くても寂しくても、それを吐露する場所がなくなってしまったんです」(リコさん)

 ここからが、死にたいとつぶやく当事者のリコさんが考える、「展望」部分だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト