責任はまず韓国にある。韓国は軍事面でその能力を十分に持っている。経済(GDP)では北朝鮮の四十数倍のパワーを有する。だが韓国の国内は分裂し、弱体をきわめている。その結果、安全保障面では非常に無責任な国家となった。
米国の歴代政権も空疎なジェスチュアに近い経済制裁だけに頼ってきた点は優柔不断だった。
北朝鮮は異常な国である。そんな国が核兵器を保有すれば、想像外の危険な行動に出るだろう。日本国民の拉致事件を考えてほしい。世界には他国の反対を押し切って核兵器を強引に保有した国は北朝鮮以外にもある。インド、パキスタン、イスラエルなどだ。だがこれらのどの国も北朝鮮のような他国の国民の拉致とか、大使館を利用しての麻薬取引、通貨偽造、政権要人の外国での暗殺など、超悪質の犯罪行為を働きはしない。
また、北朝鮮はまだ確保していない自国の核兵器を使用することを語り、他国を威す。インド、パキスタン、イスラエルなどはそんな言動はツユほどもとらない。北朝鮮は異様な犯罪国家、無責任国家なのだ。
米国の一部には「北朝鮮は公式に核を保有すれば、行動を慎重に抑制するようになる」という見解もあるが、とんでもない。核武装した北は限りなく危険な存在となる。
【PROFILE】Edward N. LUTTWAK/1942年、ルーマニア生まれ。ロンドン大学、米ジョンズ・ホプキンス大学で学び、国防省長官府任用。現在は戦略国際問題研究所(CSIS)上級アドバイザー。『中国4.0』『戦争にチャンスを与えよ』など著書多数。
●取材・構成/古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
※SAPIO2018年1・2月号