サッポロビールの高島英也社長(左)
そしてサッポロビール。同社は発泡酒や新ジャンルを含めた総市場では4位だが、ビールのみを切り出してみると3位だ。特にビール市場が右肩下がりの中、看板ブランドの「黒ラベル」の販売が昨年まで3年連続で前年超えと、1社気を吐いている。サッポロにもキリン同様、クラフトビールを手がける別会社のジャパンプレミアムブリュー(以下JPB)があるが、現時点では定義変更の対応商品予定は明かさなかった。
ただ、今後の展開のヒントとして、静岡県焼津市にあるミニブルワリーで、多品種・小ロット設備導入による生産対応をする(今年6月製造開始予定で容器も多様化したものに対応できるらしい)ことは公表した。JPBから、複数の定義変更の対応商品投入を予定しているのだろう。
「ミニブルワリーでは数百ケースぐらいの規模からビールが作れますし、年間で10種類以上のビールを発売することができるでしょう。小さく生んで大きく育てるため、新商品の発売時は販売チャネルや販売エリア、数量は絞ると思います」(同社取締役常務執行役員営業本部長の宮石徹氏)
さらに同社の髙島英也社長はこう語った。
「新たな副原料として、当社はすでにストックとしていろいろなものがあって、かつお節も使えるし、あるいは北海道の厚岸の牡蠣とか。一時的に、(定義変更対応の新商品は)ブームが来るかもしれませんが、そのブームがトレンドになるかどうかだと思っていますので、商品を出すタイミングに関してはよく考えていきたいと思います」
それよりも、上げ潮にある「黒ラベル」、さらに「ヱビス」、そして課題を残した新ジャンルのてこ入れと、やはりボリュームが稼げる商品群が最重点になるという。
確かに、定義変更対応の新商品は話題にはなるだろうが、ビール業界で救世主になるようなボリュームは到底、期待できない。しかも柑橘系や果汁系であれば、すでに様々な缶チューハイが安価で手に入るので、価格の高いビールで若年層がリピーターになってくれるかどうか。
また、逆にシニア層以上は従来の麦芽100%などの“ピュアビール”のファンが多く、定義変更に対応した商品はイマイチと思う人もいるだろう。業界全体で新たな需要を喚起する意気込みは買いだが、ビール離れを止めるまでには至らない可能性が大、というのが現実である。