本能なのか。自然の脅威を目の前にすると、オスの精神が刺激されるのだろうか? 天気が荒れると、普段は港区で金にモノを言わせて女性と飲んでいるハイスペ男たちも、荒れ狂う連絡の嵐である。あくまで「ハイスペ飲み会」で出会った男性たちの一部ではあるが、困っている子リスや子ウサギのような若い女性がいないかと探し回り、あたかも助けてあげるのを装って食らいつく様は、まるでハイエナのようなのだ。

 ただでさえ交通機関が遅延し、タクシーもつかまえにくい最中、こんなメールに対応しなければならないのは、二次災害だ。

 地震も、一部の勘違いハイスペ男にとっては女性を口説く道具に使われる。少しでも大きな地震が起きると「大丈夫? 怖くない?」などからメールは始まる。

「今日は何してるの?」
「地震でミーティングキャンセルになったから夜ひまならおいでよ」

 ある時は、外資金融の無口な40代既婚男性から「備えあれば憂いなし。お風呂のお水はためておこう(^^) 人生経験豊富な年上のいうことは聞いておこう」とあんまり目新しくない知識を送りつけられた。

 こちらとしては、自然の脅威を目の前にするからこそ、彼らのことが本能的に「無理だ」「遺伝子が拒否している」と確信する瞬間でしかない。

 しかし、こんなグッとくる連絡もあった。あの大地震の時の連絡だった。
 
「沖縄と大阪に避難できる場所の用意があるから、家族連れでもいいし、なにかあったら頼ってくれ」

 これぞ精神のハイスペである。余裕とはこのことだと思う。

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