「高齢になると、水晶体の奥にある硝子体が液状化し、外部からの力に対して脆弱になる。眼球に強い圧力を与えるようなマッサージを繰り返し行なうと、硝子体に守られている網膜の剥離を引き起こす危険がある。そもそも目のピントを合わせるための毛様体筋は、マッサージでほぐすことはできません。
目が疲れたと感じた時は、眼球を圧迫しないよう、目の周りを優しくさする程度にすべき。血流が促進されて、目のリフレッシュ効果が見込めます」
そもそも老眼とは、「目の調節力」が衰える現象を指す。人間の目は、毛様体筋という筋肉が収縮することで、“カメラのレンズ”の役割を果たしている水晶体の厚みを変え、光の屈折を調節し、ピントを合わせている。だが、加齢とともに毛様体筋の柔軟性が損なわれ、調節力が落ち、ピントを合わせにくくなってしまうのだ。
これを放置したままにしておくと、視力を低下させるだけでなく、自律神経のバランスが崩れることで自律神経失調症のような症状を引き起こし、不眠の原因にもなる。
前出の平松医師は、老眼が認知症リスクを高める可能性にも言及する。
「見えにくい状態が続くと脳へ送られる情報が減り、認知機能を働かせる機会が減少、認知症を引き起こしやすくなる。高齢者を10年以上追跡調査したアメリカの研究結果では、視力が『良い』と答えた人は『そうではない』と答えた人に比べて認知症リスクが6割も低かった」
※週刊ポスト2018年2月2日号