国内

「問題だらけの撮り鉄」を撲滅するにはどうすればいいのか

「四季島は混雑する上野を避け尾久駅で撮影しました」と小川さん

 撮り鉄というと、鉄道の撮影が好きな人なんだろうなという穏やかな印象よりも、乗客や周辺住民に迷惑をかけ、運行にも支障を出しかねない迷惑な存在というイメージが強くなっている。世間を敵に回してまで撮影を続けるのはなぜなのか。自身も撮り鉄であるライター・カメラマンの小川裕夫氏が、写真・カメラ誌『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)・佐々木広人編集長へのインタビュー取材から、迷惑撮り鉄をなくすための方策を考えてみた。

 * * *
 鉄道撮影を趣味とする、いわゆる「撮り鉄」のマナーが悪すぎるという指摘がSNSなどで相次いでいる。自分が気に入ったアングルで車両の写真を撮るために、乗客を怒鳴りつけたり、通りがかった子どもの腕を引っ張ったり、果ては駅員や運転士を邪魔者扱いして罵倒するといった粗暴な行為が動画や写真とともに拡散され、広く世間から批判されている。ともすれば事故にも繋がりかねない行動も少なくないためか、鉄道会社も様々な工夫をこらした対応をするようになってきた。

 JR東日本が昨年5月1日に運行を開始させたクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」は、豪華なデザイン、優雅な旅をコンセプトにして注目を集めた。

 出発式は上野駅で催行されたが、その様子をカメラに収めようとする撮り鉄が上野駅の13番線ホームに殺到した。

 JR東日本は乗客の安全確保のために入場規制を実施。また、乗客の旅行気分を害さないように、14番線ホームには回送列車を配置して撮り鉄ブロックを発動。JR東日本の徹底した撮り鉄対策に、集まった撮り鉄は不満を爆発させた。

 本来なら、鉄道会社にとって鉄道ファンは”客”だ。しかし、鉄道会社でもマナーの悪い鉄道ファンを嫌悪する風潮が強まっている。

 あくまでも、マナーの悪いファンは一部に過ぎない。それでも、今年に入ってからだけでも撮り鉄の暴走はあちこちで報告されている。

 千葉県・いすみ鉄道は、1月6日にキハ52を運転することで鉄道ファンを集めた。多くの鉄道ファンが集まれば、少なからず暴走するファンもいる。いすみ鉄道では、線路内に侵入し、列車の運行に支障が出る線路際に三脚を立てて撮影しようとする撮り鉄が数人いた。接触事故を起こしかねない危険な場所だ。いすみ鉄道社長は、その暴挙に憤慨。翌日のブログで迷惑な撮り鉄を晒しあげたうえ、「阿呆連中」と指弾した。

 撮り鉄の乱行は、もはや鉄道ファンの仲間内だけで知られているという状況にとどまらない。テレビや新聞などでも報道されて、世間に広く知られるようになった。特に団体行動していると、見境がつかなくなるせいか暴走するケースが目立つ。私も実際にそうした場に何回か遭遇している。特に印象に残っているのが、尾久駅に隣接する尾久車両センターで開催された「ふれあいフェスタ」での一コマだ。

 広大な操車場では、普段は間近で見る・触ることができない機関車などが並ぶ。チビっ子連れの家族もたくさん来場するので、珍しい車両の前では親子連れが記念撮影の順番待ちで列をなしていた。

 自分の世界に没入し、自分が理想とする列車写真を撮る。そのためには親子は邪魔な存在なのだろう。大声で親子連れを威嚇し、排除する。撮り鉄の行為を注意しても、逆ギレされて危害を加えられることもある。普通の親子は恐怖に駆られてしまい、静かに退散するのが常だ。

 こうした光景は一部のファンによる暴走だが、その一部によってまっとうな鉄道ファンも丸ごと世間から偏見の眼に晒される。そして、肩身の狭い思いで過ごしているのだ。

 そんな撮り鉄の悪行が流布する中、今月20日に発売された『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)2月号が衝撃的な内容だとして話題を呼んでいる。

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン