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石川県民のソウルフード「とり野菜みそ」の歴史に迫る

石川県民のソウルフード、まつやの『とり野菜みそ』

 石川県民なら知らぬ人はいない、といわれるソウルフードの素、まつやの『とり野菜みそ』。鍋料理の定番として長く親しまれており、現在は全国展開もされ、売り上げは400万食にも上る。そんな『とり野菜みそ』の歴史に迫る。

 今年のように厳冬が続く毎日に、「今夜は鍋料理」と決めた人も多いだろう。鍋料理には地域によってさまざまな種類があるが、今注目されているのがまつやの『とり野菜みそ』。名前にある“とり”は“鶏”ではなく、野菜や栄養をたっぷり“摂る”という意味からつけられたもの。

 炒め物や煮物などさまざまな料理に使われる調味みそだが、地元の石川県では鍋料理にも用いられ、しかも広く親しまれている。『とり野菜みそ』の商品化のきっかけは、今を遡ること54年前。当時のまつや社長、松本啓治さんは寿司店を営んでいた。先祖から受け継いだみそを使った鍋料理を客に振る舞うと、“みそ味の鍋料理”の珍しさから、非常に好評だった。

 その後、幹線道路沿いにあった寿司店をドライブインに変えた際に、オリジナルの「みそ鍋」を正式にメニューに載せたところ、大反響を呼んだ。地元客からも「みそを分けてほしい」との声を多く受けたという。

 その状況を知った、みその取引先、加賀味噌食品工業協業組合の理事長から「製品化して小売りしてはどうだろう」と提案され、先代は手始めに地元のスーパーで手詰めしたみそを『とり野菜みそ』として販売したところ、人気は上々。これがきっかけとなって1989年にドライブインからみそ鍋の専門店「レストランまつや」へと変更した。まつやのみそ鍋がおいしいと口コミで広まると、レストランには地元以外からの客も続々来店し、「とり野菜みそ鍋」は石川県の定番鍋料理となっていった。

 家業を先代から引き継いだ現社長の松本啓志さんは『とり野菜みそ』を使って、石川県の名を全国へ広めたいという思いが強くなったという。そこで2008年、店舗の横に工場を設立。最新の技術を導入し、袋詰めから箱詰めまで、全自動化を図った。人気の上昇とともに『とり野菜みそ』の生産量が増え、大手みそメーカーに原料の生産を依頼。安定供給を実現し、全国展開に対応させた。

 年々生産数は上がるが、さらなる工場の拡大には慎重だ。「『とり野菜みそ』は、地元でも口コミで徐々に広がってきた商品。ヒットを急いで、増産するよりも、本当のおいしさを知っていただきたい。先代が辿った道を、地道に進めれば結果は後からついてきます」と、松本さんは話す。

 厳冬の地で、地元民に愛されたまつやの『とり野菜みそ』には、石川県の熱き商人の思いが込められている。

※女性セブン2018年2月15日号

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