国内

相続制度の居住権改正、後妻と折り合い悪い場合はトラブルも

知っておきたい妻の「相続」(写真/アフロ)

「なんだか私たち、得するらしいじゃない」
「ニュースで見た見た。家がもらえるとかなんとか。イマイチよくわかんないけど」
「旦那より先に死んだら元も子もないけどね(笑い)」

 1月下旬の平日昼下がり、都心の喫茶店で中年女性3人が井戸端会議に花を咲かせていた。彼女たちの“議題”は遺産相続。1月16日、法務省が相続制度(民法)の見直し案を発表。実現すれば、実に38年ぶりの大改正となるこの改正案には、配偶者を優遇する相続制度が多数盛り込まれた。

 特に妻に恩恵が大きいのが「居住権」の新設だ。居住権とは、夫の死後、法定相続人全員の合意が得られた場合、誰が自宅を相続しても妻が自宅に住み続けることができる権利のこと。現行法では、自宅の権利は「所有権」のみだったが、改正後は居住権と所有権の2つに分割して相続することになる。

 この点がクローズアップされて報じられているが、冒頭のように「イマイチわからない」という声が多いのも事実。そこで本誌・女性セブンは、次のようなモデルケースを想定し、妻の相続分が現行法と改正後でどう変わるのかを分析した。

■夫が死亡し、妻と子供1人が残された。
■夫の遺産は資産評価額3000万円の自宅と、2000万円の預金。

 現行法も改正案も、妻の法定相続分は2分の1。2500万円が妻と子それぞれの取り分となるが、妻が自宅を相続した場合、その時点で3000万円分の資産を得ており、法定相続分を500万円超えてしまう。ここで、問題が発生する。飯塚総合法律事務所の荒木理江弁護士が語る。

「子供が『きちんと2分の1が欲しい』と要求した場合、現行法下では妻が自己資金から残りの500万円を捻出しなければならず、自宅を売却してそのお金に当てるケースが散見されました。遺産相続によって、かえって自宅を手放さなければならない可能性が出てきてしまうのです」

 そこで改正案に登場したのが、前述の「居住権」だった。

「居住権は配偶者だけに認められた権利で、利用すれば自宅の権利が分割されます。妻が居住権1500万円、子が所有権1500万円といったように、1つの自宅を2人で平等に相続できるのです(居住権と所有権の評価額を1:1と仮定した場合。現段階ではこの比率は未定)。 預金を合わせて2分の1ずつの相続が容易になる上、居住権を得た妻は、死ぬまでその家に住み続けることができます」(荒木弁護士)

 妻は2500万円分の遺産に加えて“終の住まい”を確保できるわけで、現行法に比べるとメリットが大きい。前出の荒木弁護士は、居住権の問題についても指摘する。

「居住権は婚姻期間を問わず、その家に住んでいた配偶者であれば適用できます。例えば配偶者が後妻で家族との折り合いが悪い場合などは問題が起こりやすい。後妻が居住権を主張しても家族が認めなければ、後妻はその家に住み続けることはできない。だが、後妻に居住権を与えるという遺言があれば、家族の合意より遺言が優先されるため、後妻は自宅に住み続けることができる。どちらにしても家族間トラブルの火種になりかねない危険性もはらんでいます」

※女性セブン2018年2月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
国仲涼子が『ちゅらさん』出演当時の思い出を振り返る
国仲涼子が語る“田中好子さんの思い出”と“相撲への愛” 『ちゅらさん』母娘の絆から始まった相撲部屋通い「体があたる時の音がたまらない」
週刊ポスト
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン