国内

配偶者DV 最大の被害者は子供。“負の連鎖”生まれる

DVは親から子へ“連鎖”していく(写真/アフロ)

 内閣府が発表した「配偶者暴力相談支援センターの相談件数」(2016年度)は、10万6367件。過去10年で2倍近く増えている。被害内容は「身体的暴力」に加え、人格否定などの「心理的脅迫」、生活費を渡さないなどの「経済的圧迫」まで幅広い。

 世間一般では“夫が加害者で妻が被害者”というイメージが浸透しているが、「最大の被害者は子供だ」と主張するのは、DV問題に詳しい心理士の山脇由貴子さんだ。

「DV家庭で育った子供たちは、心に闇を抱えながら育ちます。母親が殴られている光景を見て、あまりの恐怖心から精神不安になるだけでなく、発育不全やストレス性のチックなど、身体的症状も出やすいんです」

 実際、NPO法人ウィメンズライツセンターの過去の調査によれば、DV家庭で育った子供には夜尿症や喘息、頭痛、多動や破壊衝動など、顕著な特徴が表れていた。DV家庭で育った子供にとって、極めてセンシティブな時期が思春期だという。

「かつては恐怖に震えるだけだった子供も、思春期を迎えると、体力的にも父親とわたりあえるようになる。こうなると立場が一転して、父親が攻撃対象になってしまうことがあるんです。

 もともとDV家庭の子供は精神的に不安定なところがありますから、何かのきっかけで積もり積もった怒りが爆発すると、歯止めがきかない。今回の事件も、このケースだと思います。殴られる母やきょうだい…それを見て、長年張り詰めていた糸が切れてしまったのではないでしょうか」(山脇さん)

 成人後もその影響は根深く残る。

「20代、30代になっても幻聴で父の声が聞こえてきて、恐怖心で動けなくなってしまったり、女性の場合だと男性自体への恐怖心が心の奥底に刻まれ、恋愛ができないかたもいます。『母親を助けることができなかった』という罪悪感に苛まれるあまり、かえって母親に強く依存してしまう男性も見てきました。いわゆるPTSDで、こうした症状は容易には消えません」(山脇さん)

 最も恐ろしいのは、DV癖が親から子へと“伝染”することだ。内閣府の調査によれば、配偶者に暴力を振るった経験のある男性の4人に1人が「18才までに父が母に暴力を振るう光景を見ていた」と回答している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
被害者の村上隆一さんの自宅。死因は失血死だった
《売春させ、売り上げが落ちると制裁》宮城・柴田町男性殺害 被害者の長男の妻を頂点とした“売春・美人局グループ”の壮絶手口
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
突然の「非常戒厳」は、国際社会にも衝撃を与えた
韓国・尹錫悦大統領の戒厳令は妻を守るためだったのか「占い師の囁きで大統領府移転を指示」「株価操作」「高級バッグ授受」…噴出する数々の疑惑
女性セブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン