当時の河出には龍円正憲という編集者がいて、辰巳ヨシヒロの漫画を彼から教わった。龍円は、「これは面白いよ」と言って辰巳の作品の載っている雑誌『漫画Q』を片岡氏に手渡し、二人は人形町にあった同誌の編集部を尋ね、仕事をもらおうとしたが、編集長は、「どこへいってもすぐに仕事になる人たちとお見受けするから」と言ってやんわりと断わった。
編集者龍円の最大の功績は片岡義男のテナー・サックスの師匠である広瀬正のSF小説『マイナス・ゼロ』と、それに続く計四冊を河出から刊行したことだ。ところで片岡氏の参加していた新雑誌は結局創刊されることがなかった。
※週刊ポスト2018年3月16日号