ライフ

藤井六段に「恩返し」された杉本七段の「大人力」を学ぶ

杉本七段との対局を振り返る藤井六段(時事通信フォト)

「恩返し」は美しいストーリーだが、された方の振舞いは難しいものもある。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 日本でもっとも注目されている中学生・藤井聡太六段の快進撃が、ますます勢いを増しています。3月8日、大阪市の関西将棋会館で師匠の杉本昌隆七段と公式戦初対局。千日手による指し直し局で、藤井六段が杉本七段を111手で破りました。

 藤井六段は、小学四年生のときに杉本七段のもとに弟子入り。自主性を大事にする育てられ方で、その非凡な才能を伸ばしました。将棋界では、弟子が師匠に勝つことを「恩返し」と言います。会社生活やほかの仕事でも、面倒を見てきた後輩や部下に追い抜かれることは少なくありません。現在の注目度や一度の負けで「追い抜かれた」とするのは杉本七段に失礼ですが、話の流れ上、そういう表現を使わせてください。

 弟子に負けたことは、さぞ悔しかったはず。しかし、対局後の杉本七段の言動は、潔さとすがすがしさに満ちていました。後輩や部下に「恩返し」されたときに備えて、杉本七段が発した言葉をベースに「追い抜かれた側としての美しい振る舞い方」を勝手に学んでしまいましょう。

●杉本語録その1「自分の棋士人生の中でもいちばん注目された対局。こういう対局ができるのを嬉しく思った」

【見習うべきポイント】大きなプロジェクトで後輩がメインを務めて自分がサポートにまわることになり、本心では「なんで俺がこんなことを」と思ったとしても、それを言葉や顔に出すのは絶対に禁物。自分の値打ちを下げるだけだし、周囲に「だからおっさんは面倒臭いんだよ」と思われます。こういうふうにいっしょにチームを組めて嬉しい、おかげで注目される仕事ができてありがたい、と折に触れて強調しましょう。

●杉本語録その2「彼の強さは証明されている。あらためて言葉はない。勝負としては残念だが、記念にもなった。今日は素晴らしい一日でした」

【見習うべきポイント】記者の「いま藤本六段にかけたい言葉は?」という質問に答えて。成長した後輩について、余裕を示すつもりで「彼は成長した」などとホメても、無理に強がっているようにしか聞こえません。「俺がどうこう言うまでもなく、彼の実力は誰もが知っているから」と言ったほうが、器の大きさを示せるでしょう。昇進で追い抜かれたり営業成績などで明確に負けが決まったりしたときは、顔で笑って心で泣きながら「今日は記念になった。素晴らしい一日だ」と言いたいところです。

関連記事

トピックス

STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
東京都内の映画館で流されたオンラインカジノの違法性を訴える警察庁の広報動画=東京都新宿区[警察庁提供](時事通信フォト)
《フジ社員だけじゃない》オンラインカジノ捜査に警察が示した「本気度」 次のターゲットはインフルエンサーか、280億円以上つぎ込んだ男は逮捕
NEWSポストセブン
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
参政党の神谷宗幣・代表(時事通信フォト)
《自民・れいわ・維新の票を食った》都議選で大躍進「参政党現象」の実態 「流れたのは“無党派層”ではなく“無関心層”」で、単なる「極右勢力の台頭」と言い切れない本質
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン