「台本の内容が正確に伝わらなければ、お客様は感動しません。日本語では、相手の耳に届くのは母音だけ。母音をしっかり発音することで正確に言葉を届けられるのです」(吉田さん)
実際、『リトルマーメイド』公演前にも母音をきれいに発音する発声訓練がウオーミングアップに組み込まれていた。
「劇団四季では改善点を俳優同士で指摘し合ったり、作品に長く携わるメンバーが新しいメンバーにレクチャーしたりもする。“伝える”ことが多いので、普段から1音1音はっきりと届けるように意識しているんです」(島村)
【5】全員が主役
劇団四季では俳優だけが主役ではない。前述の通り、それぞれの持ち場で、それぞれがプロとして全力を傾けて舞台を作り上げている。全員がかけがえのない戦力であり、“主役”なのである。吉田さんがこんなエピソードを明かす。
「劇団には誕生月の会がある。そこでは俳優や技術、経営スタッフも一堂に会します。私の誕生月の6月は“あじさい会”と呼ばれています。一緒に食事をしながら、それぞれが対等な立場で意見交換できるようになるんです」
65周年を迎えた劇団四季。代表の吉田さんは強い眼差しで“劇団の未来”について、こう語った。
「少子高齢化の日本では、先細りになっていくことは間違いない。今後は海外にも視野を広げていく必要があります。そのためには輸入作品ではなく、海外で自由に興行できる“オリジナル作品”を生み出すことが必要になってくる。現在の土台は浅利慶太先生はじめ、多くの先輩がたによって築かれたもの。今を生きるわれわれは、この先の65年を見据えて次の世代にバトンを渡していかねばならない」
劇団四季が世界に羽ばたく日もそう遠くない。
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号