現在東京公演でアラジン役を担い、『ライオンキング』のシンバ役なども演じている島村幸大が、過去に経験した“挫折”を語る。
「劇団四季の作品は高い身体能力を求められるものが多い。稽古中にけがをして、なかなか復帰することができず退団を考えた時期もあった。当時、体はもちろんですが、心がついていかなかった。悩んでいるときに、演出家から“明日歌を聴くぞ”と肩を叩かれました。それを機に俳優としての覚悟を決めるとシンバ役を手にすることができました。やはり常に全力で自分を高めていないとダメだと痛感しました」
また、劇団四季では「1年契約制度」を設けている。前出の吉田さんが話す。
「毎年、1年間を振り返ってどれだけの舞台を踏んだか、どれだけ新しいことに挑戦したか、各々の実力をそうした点を踏まえて翌年の更新を決めます」
劇団四季は入るよりも生き残る方が難しいのである。
【3】美術のこだわり
劇団四季といえば、俳優の迫力ある演技や踊りもさることながら、舞台美術も魅力の1つ。その象徴が『キャッツ』の“ゴミ”のオブジェだ。初演からこの作品に携わる舞台美術家の土屋茂昭さんが“ゴミ”へのこだわりを語る。
「この作品では、猫の目線で作られた3倍の大きさのゴミのオブジェが舞台上から客席まで所狭しと飾られています。すべてが精密かつリアルに再現されており、まさに美術品のよう。34年間で蓄積されたメモリーでもあるゴミたちをいつか美術館で展示したいほどです。私にとって『キャッツ』のゴミはアートなのです」
舞台に散らばるゴミの数は2500以上。中には、公演する地域にあわせて特産品などのご当地ゴミもちりばめられている。その1つ1つを手作りしているのだ。
【4】母音法で言葉を伝える
これまで劇団の作品を何作も見てきたというファンが振り返る。
「ミュージカルって俳優の声が音楽にかき消されて、物語がわからなくなることも多いんですけど、劇団四季にはそのストレスがない」(48才会社員)
その理由について、前出の安倍氏がこう語る。
「『母音法』という発声を支えるオリジナルのメソッドが確立されている。今後も継承され、ブラッシュアップしていくでしょう」
横浜市内にある本拠地・四季芸術センターには、〈一音落とす者は、去れ!〉という心得が掲げられている。