◆背後に、わが国独特の「ご都合主義」

 このように女性専用車両は、いまだに人権や正義の問題をクリアできているとは思えない。

 ちなみに海外でも、いくつかの国で女性専用車両を導入した例があるが、男性ばかりか女性からも抗議の声があがり、早期に廃止されたそうである。その点、原理原則についての議論を棚上げし、ニーズが大きいから、大半の人が受け入れているからという理由で次々に女性専用車両を導入したわが国の鉄道会社や自治体の姿勢は、いささか「ご都合主義」的に映る。

 とはいえ、これだけ普及した女性専用車両を直ちに廃止せよというのは非現実的である。

 ただ上記のような問題がクリアされていない以上、間違っても「痴漢の被害を防ぐため」という理由は公然と唱えないほうがよい。また「女性専用」に協力するよう求めても応じない男性に乗客が「降りろ」コールをしたり、駅員が執拗に降車を迫ったりするのは、やはり行き過ぎである。

 女湯や女性用トイレに男性が入ってきたのとはわけが違うのだから。「確信犯」であろうと誤って乗車したのだろうと、他の車両に移るよう求めるところまでが限界であり、断られたらあきらめるというのが穏当なやり方ではなかろうか。

 当然ながら痴漢は悪質な犯罪であり、それが多発する現状を放置しておくことはではない。女性がより安心して乗車できるようにするためにも、こうした無用なトラブルを引き起こさないためにも、女性専用車両にかわる痴漢被害の防止策をもっと真剣に考えてもらいたい。高度な監視カメラを設置するとか、吊り輪に防犯ブザーを取り付けるとか、方法はいろいろあるはずだ。

 繰り返すが、この問題が差別解消の運動や男女共同の推進にとって足かせにならないことを願っている。

関連記事

トピックス

新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
2025年10月23日、盛岡市中心部にあらわれたクマ(岩手日報/共同通信イメージズ)
《千島列島の“白いヒグマ”に見える「熊の特異な生態」》「冬眠」と「交雑繁殖」で寒冷地にも急激な温暖化にも対応済み
NEWSポストセブン
中村雅俊が松田優作との思い出などを振り返る(撮影/塩原 洋)
《中村雅俊が語る“俺たちの時代”》松田優作との共演を振り返る「よく説教され、ライブに来ては『おまえ歌をやめろよ』と言われた」
週刊ポスト
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
医師がおすすめ!ウイルスなどの感染症対策に大切なこととは…?(写真はイメージです)
感染予防の新常識は「のどを制するものが冬を制する」 風邪の季節に注意すべき“のど乾燥スパイラル”とは?
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン
チャリティーバザーを訪問された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《4年会えていない姉への思いも?》佳子さま、8年前に小室眞子さんが着用した“お下がり”ワンピで登場 民族衣装のようなデザインにパールをプラスしてエレガントに
NEWSポストセブン
佳子さまの“着帽なし”の装いが物議を醸している(写真/共同通信社)
「マナーとして大丈夫なのか」と心配の声も…佳子さま“脱帽ファッション”に込められた「姉の眞子さんから受け継ぐ」日本の伝統文化への思い
週刊ポスト
真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン