──アルバイトを必ずさせるのは、野球部の伝統ですか?
濱田監督:はい、正月休みにします。普通はアルバイト禁止の学校が多いですが、富校では生徒の経済的な問題などもあるので、長期休暇中に部単位だったらアルバイトをしてもいいルールがあります。バイト先は近くの郵便局、うどん屋、ガソリンスタンドなどです。稼いだお金は、「親に全額をあげなさい」と言っています。でもそれぞれの家庭で、「いろんな事に使わせてもらうね」という親もいれば、「自分で稼いだお金だから、好きなもの買いなさい」や「遠征代に使って」という親もいますね。
自分が朝早く起きて職場に行って、1日中立ちっぱなしでいくら貰えるか、例えば、バイト代が5000円だったら、自分が2万円するスパイクを買いたいと思った時、バイト代4回分だから、物を大事にしなくてはいけないと、物があふれた時代でその有難さも考えて欲しいということです。
──毎年5月には、遠路はるばる関東遠征に行く理由は?
濱田監督:関東に行く理由は、やっぱりネームバリューのある学校や自分たちが勉強になる学校に行って学ぶことです。神奈川は激戦区なので、去年は横浜隼人と日大藤沢。その前年は横浜高校と東海大相模とやりました。今年は横浜隼人と国士舘と試合する予定です。結局そういうチームと戦うと、夏の大事な場面になった時、「自分たちは横浜高校とやったんだ」という自信も必要になってくると思います。だから、あえて関東遠征に行っています。
──監督にとって、甲子園というのは、どんな場所ですか?
濱田監督:個人的には、一生に一度行ければいいと思っていましたが、行ったら行ったで、2回、3回と行きたい場所になりました。普通の球場のベンチは箱型だから、どこを見てもコンクリートだけど、甲子園だけは後ろを振り返れば、お客さんの顔があるような球場だと話しています。そのベンチで、歓声が自分の体を突き抜けるという感覚を初めて経験したので、子供たちにもそれを経験して欲しいと思っています。
私は甲子園がすべてだとは思いませんが、やっぱり甲子園を目標にして、行った人にしか分からないことを伝える事で、子供たちも、「行きたいな、そこでやってみたいな」と思わせる事も大事だと思っています。
──今回の甲子園出場は、全国の公立校にとっては大きな意味がありますね。
濱田監督:そうですね。宮崎の県大会出場校数は合同チームもあるので45チームほどで、九州の他県と比べると、私学の数が多いのも特徴です。出場決定以降、宮崎でも色々な指導者の方々から、「うちも頑張ればなんとかなる」という声を聞くし、そう思われる方は多いんじゃないかと思います。