──紅白戦中、補欠部員や吹奏楽部員、そして父兄が甲子園に向けた応援練習していましたね。
濱田監督:そうですね。何もない所を一緒に作って行くと、心が一つになっていくのかなと実感します。保護者の気持ちも一つにまとまって、応援するようになりました。私の存在だけではなく、徐々に結果がついてきました。2014年には1年生が18人も入部してくれて、秋には公式戦初勝利、さらに1年生大会に優勝して勢いがつきました。そして2015年秋に県大会準優勝に結果、公約通りに、「3年で九州大会出場」を実現させ、色々と注目されるようになりました。そうなると、学校や先生たちの見る目も変わってきたというのはあると思います。
──公立校で、監督や部長がいるケースがあっても、さらに副部長とコーチが3人いる「5人体制」は非常に珍しいですよね?
濱田監督:企業に勤めた経験から、分からないことは、分かる人に任せた方がよいと考えています。私一人の力は微々たるもので、私のないものを持っている人たちと役割を分担して、そこで責任を持ってもらうという意味もあります。赴任してからすぐに地元出身の中川清治コーチ(日向高から日体大)に声をかけさせて頂き、「私がやりにくさを感じたときは辞めてもらいます」と事前に話した上で、「とにかく好きなようにやってもらいたい」と、二人三脚が始まりました。
──役割分担は?
濱田監督:「有形の力」と「無形の力」の2つで考えています。有形の力は、練習メニューの作成や技術指導というもので、全て中川コーチに任せています。無形の力は、戦術や戦略、そして試合に臨む姿勢や心構えという気持ちの部分で、それは私が全部みています。
例えば、私が、「いまこういう野球が流行ってきているから、うちでやるにはどうしましょうか」と相談すると、中川コーチが、「それにはこういう選手が必要になってくるから、こんな練習をしましょう」という話になります。
──富島野球のキーワードは、「可視化」と「目標設定」ですか?
濱田監督:ベースランニングにしても、ストップウォッチで測れるものは全部数値化します。例えば、ゲーム形式のシートノックは、守備、バッターランナー、1塁・2塁ランナーのそれぞれに、4人くらいでストップウォッチを持って計測します。ノッカーが打った瞬間がスタートになるので、バッターランナーは1塁を駆け抜けるまで、何秒までに走らないとダメとか、外野はセカンドランナーを殺すまでに何秒で返球しないといけないとか。すべて数値化しているので、それが自分たちの目安になります。
──可視化に慣れると、選手の意識も上がって来ますね。
濱田監督:そうです。もっと、もっと、となります。動きが速く見えるけど実は遅かったり、遅く見えているけど実は速かったりなど、数字は嘘をつきません。ホームまで6秒7で返って来るセカンドランナーは、外野手が6秒5でホームに返球しないとアウトにできません。その場合、ゴロのヒットの時はどれくらい前に出てきて返球しないとアウトにできない、という練習を繰り返し、繰り返しやっています。それが「可視化」です。