夕食会は鮮やかな紫のワンピース。感性豊かで神秘的、高貴さをイメージさせる色だ。2日目はグレーに白い柄のワンピース、首元にはオフホワイトのストールが巻かれている。その着こなしには、気位の高さや大人の雰囲気が醸し出されていた。習主席夫妻と金委員長夫妻の服装を比べてみると、その雰囲気は大人と子供といった感じだ。老練さと若さや硬さ、洗練さとやぼったさ──まさに対照的である。
両者の服装からくるイメージは、そのまま今回の首脳会談そのものにも投影されていた。金委員長は驚くほどの低姿勢。そんな彼に習主席は大人感を漂わせて、若輩者を迎え入れたという印象だ。背景にはトランプ大統領との会談を前に、中朝関係を改善し、中国の後ろ盾を得ておきたいという意図があるらしい。それにしても、これまで目にしてきた金委員長とはまるで別人だ。
握手している習主席と金委員長の写真を見ると、金委員長の肘の位置が上がっているのがわかる。背の高い習主席の高さに合わせて握手をしているため、金委員長の肘が持ち上がっているのだ。いつもは堂々と先頭を闊歩しているが、赤絨毯の上を歩く時も決して習主席より前に出ることはない。
会談の席では、習主席の話をやや緊張した面持ちで聞いたり、熱心にメモする映像が撮られている。自分の話にメモを取らなかったという理由で、高官を粛正したという噂がある金委員長の行動とは思えないほど、従順さを示している。ちなみに並んで座る北朝鮮の同行者らも、金委員長がメモしている間は一緒にメモしていた。そこは統制が取れているらしい。
習主席をじっと見つめて、その話に真剣に耳を傾けている間、金委員長の手は絶えずテーブルの上に置かれていた。下心がないことを仕草で示しているのだろうか。自分が話している時は、前にずらりと並んだ中国閣僚らに向かって、右へ左へと視線を配るという気の使いようも見せていた。ちなみに、習主席も金委員長も話している間中、互いに目を合わせることはなかった。
「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」という金委員長。果たして、今度こそ習主席をやきもきさせ、そのメンツを潰すことなく有言実行となるのか…? 5月に予定されているトランプ大統領との会談に向け、その動向に注目したい。