関西で重粒子線治療が受けられるのは、これまで兵庫県たつの市の兵庫県立粒子線医療センターのみだった。大坂城にほど近く、府庁や府警が並ぶ市の中心部に同施設ができたことで、利便性は格段に向上した。
ただし建設に関しては、都市部であるがゆえの困難があった。重粒子線を発生させるには、直径17メートル、重量800トン以上もある巨大な加速器という装置が必要であり、放射線を扱うため厳重な構造や管理も求められる。その一方で敷地は限られており、工事を進めるためのスペース確保からして大きな課題となった。
施工した鹿島建設はこれまでも国内の重粒子線施設の建設を複数手がけてきており、豊富な実績があった。それらの経験をもとに、塩崎寛吉・工事事務所長を中心に様々な工夫で乗り越えたという。同社関西支店営業部の道浦嘉奈子・営業部長は語る。
「品質と工期を両立させるために、加速器や治療室のある装置エリアはRC造(鉄筋コンクリート)、診察室や受付など居室エリアは鉄骨造というハイブリッド構造を提案、採用されました。敷地が限られるため、まずは装置エリアを先行させて工事を進めることで作業スペースを確保することができました。
また、敷地の前面にある道路の下に、400年以上前に豊臣秀吉が整備した下水路『太閤下水』があることもネックとなりました。重機を設置する際にはその部分の補強も不可欠でした」
そして最大のポイントとなったのが、最先端の装置を囲むコンクリートの扱いだった。同社関西支店建築部の勝森宏昌・建築工事部長はこう振り返る。