「学部合格者数はここ10年間、毎年2人程度と横ばいですから、以前に比べ全体の日本人在籍者数が減った一番の理由は、9割以上を占める大学院進学(在籍)者の減少と考えられます」
背景として、(1)バブル崩壊後、長く続いた景気悪化に伴って企業がコスト削減を追求した結果、社費留学が減ったこと、(2)社員を送り出しても帰国後に会社を辞めてしまうケースが多く企業側にメリットがなくなったことがあげられるという。
マサチューセッツ工科大学(MIT)など他の一流校も似たような状況だ。企業にとってグローバル人材の確保・育成が必須と言われる時代にこれで大丈夫なのだろうか。
一筋の光は、ハーバード大の日本人在籍者数が2014~2015年度の82人を底に、その後は回復基調にあることだ。前述の通り、最新データでは107人まで持ち直している。
「海外留学を再評価した一部の企業が、ここにきて社員を積極的に海外へ送り出し始めているという話を聞きます。また大学院進学者を支援する奨学金が日本でも少しずつ増えてきていることも理由の一つとして考えられます」(前出・尾澤氏)
学部出願者も数年前は40~50人だったが、昨年は100人ほどになったというから、「内向き」は過去の話になりつつあるようだ。今後に期待したい。
●たけすえ・ゆきしげ/1959年福岡県生まれ。雑誌編集者などを経て1988年渡米。2005年からフリーランスに。現在邦字紙「さくら」の編集長も務める。
※SAPIO2018年3・4月号