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「タダでも欲しくない」不動産が日本中で増え続けている

 私たちがよく使う「一生懸命」という言葉は、誤用から生まれた。元々は「一所懸命」なのだ。意味は、「ひとつの不動産を得たら、命をかけても守り抜く」ということ。それが、日本人が持っていた不動産に対する伝統的な価値観だった。

 今の40代以上の世代なら思い当たるだろう。これよりも上の世代は、それこそ命をかけてマイホームを獲得しようとした。35年ローンという、今の価値観で見れば信じられないような長期間の金融的な拘束を受け容れてでも、マイホームを購入しようとしたのだ。

 しかし、すでに時代は変わってしまった。日本の中でも、35年ローンでマイホームを購入しようとしているのは、都心部に生活拠点を求めるほんの一部の給与所得者だけになってしまった。

 それ以外に生活拠点をもつ大多数の日本人にとって、贅沢さえい言わなければいまや住宅はタダ同然で手に入る状態になってしまったのだ。

 これはまさしく、日本という国で稲作が始まり、不動産に経済的な価値を見出されて以来の大転換ではなかろうか。

 そもそも、この国における不動産=土地の価値は農業が原点だ。不動産=土地から米を始めとした農作物という価値が生まれることで、その土地自体の経済価値が発生した。

 産業の中心が農業から工業や商業に移った後も、増え続ける人口を収容できる不動産=住宅の価値は上昇し続けた。もちろん、店舗や工場などに使われる不動産への需要は拡大した。当然、その経済的な価値も増幅する。「不動産の価値は下がらない。必ず上昇する」という、いわゆる「土地神話」は、そういう過程で生まれた。

 今、人口は増えていない。減り始めた。しかし、都心部では世帯数という住宅需要は増え続けたので、住宅の価値は下がらなかった。首都圏の都心部では建築コストが上昇したことと、人々の思惑によってマンションの市場価格は上がってしまった。

 一方、遠隔郊外や地方では、世帯数という住宅需要が増えない。人口自体は減少し続けている。さらにインターネットの普及により物を売る店舗の必要性が減少した。物を作る工場などの設備も、世界の工場と化した現代中国の出現によって必要性が薄れた。すなわち、日本全体で不動産に対する需要が著しく減退した。もとより、食料を生産する農業の必要性も、貿易の自由化によって縮小してしまった。

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