桐生の小学生のスラリと伸びた足の長さを見よ!(昭和33年)
齋藤さん:「いたぞ~」と言う声の方向にかけ出した男の子たちのあとを追いかけたら、子犬を抱いた男の子がしゃがみ込んでいたの。ボロボロのバラック小屋に、親に隠れてこっそり飼っていたのね。家に連れて帰ると「エサはどうするんだ」と怒られるから。戦争が終わって10年。親世代にとって犬のエサ代は重たかったんですよ。
オバ:下駄をはいたおじいさんが乳母車を押している所は?
齋藤さん:私の通っていた小学校で、家から徒歩3分。だから、卒業してからも朝に夕に、しょっちゅうカメラを持って校庭に行っていました。校庭は今と違って、いつでも誰でも入れるから、子供たちは朝早くから放課後暗くなるまで遊んで、それを近所の大人たちが見守っていた。
この日は、朝、濃い霧が出たので、幻想的な学校が撮れるかもと走って行ったら、顔見知りのおじいさんが乳母車を押していたの。乳母車には絵本が入っていて、この後、孫に読み聞かせをしていたわ。この時代は、どこの家でも祖父母が若夫婦を助けて子守りをしたのよね。
オバ:こちらの写真は?
齋藤さん:「〇日は誕生会、□日は卒園式だから来て」と写真をだんだんアテにされるようになっていて…この日はお誕生会でした。
オバ:後ろに保護者、前列が誕生日月の子なのね。プレゼントは箱にリボンじゃなくて、“のし”。それでも今の子供よりずっときれいな目をしているように感じるのよね。
齋藤さん:みんな、いま、どうしているんだろう。写真展をすると、「これは私です」という写真のモデルが現れることもあるんですよ。
◆「三丁目写真館」展は5月末日まで小学館本社1階ギャラリーで開催中
◆齋藤利江 写真展『三丁目写真館 ~昭和30年代の人・物・暮らし~』(東京都中央区銀座2-9-14 1F写真弘社内 a´ギャラリー・アートグラフで6月1~7日)
◆『三丁目写真館 ~昭和30年代の人・物・暮らし~』(写真・文/齋藤利江、小学館刊、1944円)
※女性セブン2018年5月31日号