(1)の段階で「偽陽性」判定にされやすいこともあるが、そのあとの段階ではどうか。がん患者らの相談に乗り、病院や治療法を紹介する「がんコーディネーター」の藤野邦夫氏がいう。
「CTやMRIの画像診断でも、膵臓がんや胆管がんなどは嚢胞が影のように映り、それががんに見えてしまうなど判断に迷うケースがあるのは事実です」
がんが発生する臓器によっても「判断の難しさ」は変わってくる。自治医科大学附属病院の病理診断部長・福嶋敬宜氏はこう説明する。
「膵臓や胆管など、体内の奥に位置する臓器は一般的に組織の採取が困難です。特に高齢者など患者さんの体の状態が良くないと、針を刺して組織を採取する検査が負担になり、危険を伴うためそもそも病理検査ができないことがあります。その場合、臨床医が画像診断をもとに判断するしかなくなるのです」
「確定診断」と呼ばれる病理検査でも見分けられないケースはある。近畿大学医学部附属病院・臨床研究センター講師で病理専門医の榎木英介氏はこう語る。
「炎症部(良性腫瘍)などを悪性腫瘍と判断してしまうケースがあります。がん細胞は異常なスピードで増殖しますが、実は炎症部も細胞レベルで見ると、一度破壊された細胞が急速に再生される現象が起きていて、顕微鏡で覗くと、非常によく似た光景が広がります。
この患者は以前からこの場所に腫瘍があったのか、過去にがんを発症したことがあるかなど、他に判断材料がないと、炎症をがんと間違えてしまう可能性はあると言えます」