実際に高齢の内科医のなかには、最新の診療ガイドラインをきちんと把握しないまま、診療を続けている人もいるという。
「たとえば、70歳を超えた患者に、効果より副作用のほうが大きいと認識されるようになった旧製品の骨粗鬆薬を処方したり、糖尿病治療薬や降圧剤でも、旧来の考え方で、若い人と同じレベルまで血糖値や血圧を下げようと過剰処方してしまうケースがあります」(前出・米山医師)
高齢の医師が、最新の医療についていけない例は他にもある。医療ジャーナリストの油井香代子氏はこんな例を挙げる。
「肺炎の予防には肺炎球菌ワクチンが有効で、仮にかかっても重症化を防ぐ効果があるとされ、2014年のガイドライン変更では『65歳以上の人は予防接種を受ける』努力義務が課されました。しかし、高齢医師にはこの変更を知らない人もいます。認知症薬を処方されている患者に、風邪薬の抗ヒスタミン薬を処方するとせん妄などの副作用があることを知らない人も多い」
医師は引退するまで勉強し続けなければならない職業なのだ。
※週刊ポスト2018年6月1日号