◆強制的な制度改革が必要
このような同じパターンによる負の連鎖を断ち切るには、大事なポイントがある。それは、不祥事が起きたときに特定の組織や個人に固有の問題として扱ったり、「倫理観の欠如」といった精神論で片づけたりしてはいけないということである。
この種の不祥事が続発していることからもわかるように、ある意味で日本型組織そのものの体質が問われているのであり、そこにメスを入れなければ今後も繰り返されるだろう。
前述したように、閉鎖的でメンバーが固定化、同質化した共同体型組織が事件や不正の温床になっている。強固な結束を誇る共同体型組織には長所もあるが、いまの時代には通用しなくなったのである。
そこで求められるのは、開かれた組織に変えるとともに、異質な人間を加え、メンバーを入れ替えることである。しかし、共同体型組織は多くのメンバーにとって居心地がよく、既得権のしがらみがあるので内側から改革が進むことは期待できない。したがって外から半ば強制的に開放性、流動性、異質性を高めることが必要になる。
いくつかの対策を提案しよう。
たとえばアメフトなど大学の団体競技の場合、レギュラーの一定数を定期的に入れ替えるとか、他大学の選手をレンタルするように義務づけてはどうだろう。あるいはチームに留学生を入れることを促進してもよい。メンバーが入れ替わり、外の血も入ってくれば内部の序列が崩れ、理不尽な慣行は通用しなくなるし、他大学への技術の普及や大学間格差の是正にもつながるのではないか。
大相撲の部屋については、以前このサイトで提案したように若手を対象にFA(フリーエージェント)制度を取り入れれば、密室での暴力やいじめも減らせるに違いない。
官庁の場合、官民人事交流制度はあるものの、実際には十分に機能していない。やはりここでも幹部ポストの一定割合は民間から、あるいは地方機関のノンキャリア組から登用するよう制度化するとか、省庁をまたいでも自発的に異動できるFA制度を導入することが望ましい。
ほかにも対策はある。政治経済学者のA・O・ハーシュマンは、組織の中にいる者が不満を解消する方法として、「退出」すなわち出て行くことと並んで「告発」をあげている(『組織社会の論理構造』)。
いまの時代にその有効な手段はネットへの投稿である。内部情報の漏洩や誹謗中傷の広がりを恐れて内部者の投稿を規制している組織が多いが、ブラック企業の告発がそれなりの改善効果をあげていることを見てもわかるように、用い方しだいでは共同体内部の不正をただす有効なツールとなる。組織のトップは、内部の風通しをよくするため、一定のルールのもとに個人の自由な発言を容認するべきだろう。
良くも悪くも人間の行動は環境や仕組みによって左右される。組織の中で発生する問題の多くは、組織の構造に原因があるということを見逃してはいけない。