根管を通じて歯の周囲にまで感染が広がった状態をそのまま放置したり、いい加減な治療を施されたままにするとどうなるか。
歯髄が死ぬと痛みは消えるが、感染が広がって歯根の周囲の骨を溶かしてしまう場合があるのだ。画像の患者もそうだった。さらに悪化すると、感染は体のあちこちに広がり、最悪の場合、糸球体腎炎や感染性心内膜炎など、死に至ることもあるという。
ただし、この患者は「抜歯」せずに済んでいた。しかも、1年4か月後には、溶けた骨もほぼ再生されていたのである。これを可能にしたのが、歯科用顕微鏡のマイクロスコープを使用した、最新の「根管治療」だ。
◆「根管治療」を進化させたマイクロスコープ
根管の直径は0.3ミリ程度。肉眼では、その内部までは見えないため、“手探りの治療”と言われていた。東京歯科大元教授の中川寛一氏は、根管治療にマイクロスコープを導入、治療成績を大きく上げたという。