「薬の飲み忘れは誤薬に該当するのですが、大事に至らない場合、“1回くらいなら大丈夫だろう”と事故として記録しない施設は多い。

 オムツパッドやトイレットペーパーを食べてしまったという異食の事案も介護の現場では日常茶飯事ですが、大事に至らないケースが多いのも事実。そうすると事故としてカウントしない老人ホームもあるはずです。

 老人ホームは報告しているのに自治体がきちんと把握していない場合もある。明確な基準を作り、事故の情報を共有しなければ老人ホームの事故が減少するとは思えません」

◆誤嚥性肺炎を招く介助

 今回調査した中で、死亡件数が最も高い事故は「誤嚥(飲食物の飲み込みがうまくいかないこと)」で、事故件数が357件に対し、死亡者数は72人。誤嚥を起こした人のうち、およそ5人に1人が亡くなっている計算だ。

 飲食物の飲み込みがうまくいかないことがどうしてこれほどの死亡率の高さに繋がるのか。『認知症を堂々と生きる』の著書もある宮本礼子医師が語る。

「誤嚥での死亡とは、誤嚥性肺炎になることによる死亡です。飲食物を飲み込む時、喉の奥の弁が自動で開閉し、肺に飲食物が入ってしまわないように調節します。ところが高齢になると弁の開閉がうまくいかず、飲食物の一部が肺に入ってしまう。肺へ不純物が入ると、これが原因で肺炎を患ってしまうのです」

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