さらに、発覚している数は「氷山の一角ではないか」と語るのは、秋津医院院長の秋津壽男氏(総合内科専門医)だ。
「たとえ最初の診断報告書を見落としても、半年後の再検査で見つかれば、問題にならない可能性もある。そうした“見落としによる発見遅れ”は多いでしょう」
なぜ医師は報告書を見落としてしまうのか。放射線診断専門医である熊本大学大学院・生命科学研究部教授の山下康行氏はこう説明する。
「今のCTは昔と違い、様々な臓器を短時間で撮影できます。画像診断の専門医が、色々な臓器の病変までくまなく観察できるようになったのですが、担当医が専門以外の領域を十分に見られないケースは多いと思います。
日本では画像診断が安易に行なわれすぎていることも、確認ミスを生み出している原因の一つでしょう。欧米では対象にならないような患者に対しても検査が行なわれるため、画像診断報告書をはじめ、情報の量は膨大になる。報告書を受け取る担当医には、重要度の高いものから低いものまで電子カルテが無数に届くことで、重篤な患者の情報が埋もれてしまい、見落としが生まれる構図があります」
※週刊ポスト2018年6月29日号