がんや脳梗塞など、死に至る病の芽を一刻も早く摘むために、いまやCT(コンピューター断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの画像診断は欠かせない。一方で、多くの患者を抱える大病院で「画像診断の見落とし」が起きていたことが明らかになっている。医療事故の分析などを行なう「日本医療機能評価機構」によると、画像診断報告書の確認ミスは2004~2013年の10年間で17件報告されていたが、2014~2017年の4年間だけで41件に急増したという。
問題の一つが、画像診断のプロが少ないことだ。経済協力開発機構(OECD)の2017年の統計によると、人口100万人あたりのCT装置の数は日本が107台で、加盟35か国の中で最も多い。しかし装置の数に比べて、そのCTを扱う放射線科の専門医の数は、圧倒的に不足しているという。
公益社団法人・日本医学放射線学会によれば、放射線診断専門医と放射線治療専門医を合わせた人数は6675人(2017年11月1日時点)だが、同学会の会員でもある山下氏はこう言うのだ。
「放射線診断専門医は明らかに不足しています。特に関東以北では少なく、非専門医が読影(画像から患部の状況を判断すること)しているケースが多いようです」
秋津医院院長の秋津壽男氏(総合内科専門医)によれば、「放射線診断専門医でなければ読影は難しい」という。
「たとえば肺に5cmのがんが写っていれば誰でも分かりますが、これが2~3mmだと、がんの専門医でも見落としてしまう。それを拾って、『肺がんの疑い』と指摘できるのが、放射線診断専門医です。せっかく画像で詳細なデータを取っても、医師がそれを診断できなければ意味がありません。私の医院では、患者さんの画像診断を専門医のいる施設に依頼することもあります」