なぜ、日本サッカー協会はハリルホジッチを突然解任したのか。信頼を失っていたと言うならば、なぜそれを回復させるような仲介の努力をしなかったのか。田嶋会長が言った「我々はもう前を向いている」は検証と自省の放棄、「これからはオールジャパンで」という言葉は責任を外国人であることに押しつける仕打ち。デットマール・クラマーからオシムに至るまで日本サッカーのために貢献してくれた外国人指導者に対する侮辱であろう。例えこのままグループリーグを突破したとしても、またしてもこの監督交代劇の説明責任がうやむやにされるのは堪らない。

 結果による瞬間風速的な求心力は結果が出なくなると衰退する。それよりも信頼を得るのは、不義を働かずに来たプロセスにある。そんな思いも込めて「オシム 終わりなき闘い」を加筆した。

【プロフィール】木村元彦(きむら・ゆきひこ)/ノンフィクションライター、ビデオジャーナリスト。1962年愛知県生まれ。中央大学文学部卒。スポーツ人物論、民族問題の取材を続けている。主な著書に『悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記』『オシムの言葉』『争うは本意ならねど』『徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男』『爆走社長の天国と地獄 大分トリニータv.s.溝畑宏』など。6月24日(日)、大阪隆祥刊書店にて『オシム 終わりなき闘い』発刊記念トークイベントを開催予定。http:/atta2.weblogs.jp/ryushokan/

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