国内

ワンボックスカーで全国をさすらうヤミの「人材派遣業者」

駐車場に駐車しつづけるワンボックスカーの正体は

 いま、地方の大型ショッピングセンターなどに遠隔地ナンバーのワンボックスカーがあらわれ、しばらく停まったあと次の土地へと移動する光景が、全国でみられるという。同じワゴン車に乗り合わせて旅をするといえば、恋愛リアリティ番組の『あいのり』がよく知られているが、そんなロマンチックな乗り物とはかなり異なるらしい。女性たちを乗せたワンボックスカーは、なぜ日本中をさすらっているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 中部地方の某市にある大型ショッピングモールの駐車場。そこに一週間ほど、白いトヨタのワンボックスカーが朝から晩まで停まっていた。ナンバーは周辺ではめったに見かけることがない東北地方某県のものだったという。車を目撃した地区の自治会長が振り返る。

「他県の、しかも遠方のナンバーで、見た目もボロボロ。最初は盗難車かと思ったがエンジンはかかっている。さらには毎日停まっているし、よく見ると運転手のほかに、三~四人の女性が乗っている。気味が悪いったらありません」(地区の自治会長)

 いつの間にか消えていたワンボックスカーが、またしてもその駐車場に現れたのは三週間ほど前。さすがに不審に思った自治会長が車を観察したところ、朝の九時ごろにやってきて、一時間に一度くらいのタイミングで別の車がワゴン車に横付けされると、女性がサッと乗り換えて、どこかへ向かっていく。また一時間ほどすると同じ女性が帰ってくる。別の女性が同じように出ては戻ってくる、ということも繰り返し、それは深夜まで続いた。

「実は警察に通報もしたんですが、ただ停まっているだけだということで、対処 のしようがないと言われました。ショッピングモール側も“お客様であることを否定できない”という ことで不介入。田舎なのでショッピングセンター利用者以外の駐車場利用も暗黙の了解で、誰でも好きな時に、23時の閉店まで停められるんです。町会の若い人が調べたところ、彼らの正体が移動式の派遣型性風俗業者だということがわかりました」(前出の自治会長)

 携帯電話やインターネットを利用して客を募る派遣型風俗店が増えているが、同じように増えているのが、ネット掲示板やSNSを利用して客を募る「援デリ」業者だ。「援助交際」と「デリバリー」を合わせた造語で、援助交際を装って客を募り、性的サービスをする女性を派遣する業者の事である。利用者は「援助交際」のつもりで女性とアポイントを取り付けるが、実は女性のふりをした男性が掲示板に書き込んだり、客とのやり取りを行っており、場合によっては「管理売春」にもなりうる行為だ。だが実態はほとんどが無届の“援交風”性風俗業者であり、主に都市圏で、このような事例が横行しているのだという。

「この数年でこの手の業者が爆発的に増えましたが、客だって“援助交際じゃないぞ”とか、騙されるかもしれない、危ないと気が付き始めました。そこで業者は、女の子を連れてワンボックスカーなどで全国を転々とし、その先々で金を稼ぐ。首都圏から少し足を延ばした中部地方だけでなく北海道から沖縄まで、こうした業者が回っているそうです」

 こう話すのは、東京都内の性風俗店関係者・X氏。手軽に始められるということで、派遣型風俗ビジネスに乗り出した知人らが、最近になって「これでは食っていけない」と廃業していくのを見てきた。ところが一部の業者は、女性数人と車一台に 携帯電話一台を握りしめ、全国を転々としながら、生き残りを図っているのだという。通常の派遣業者が用意する女の子たちの待機場所はマンションの一室など「家」と呼べる場所の代わりに、放浪しながら仕事を続ける彼らは、ワンボックスカーを待機場所にしている。そして、送迎車とドライバーは現地で雇っていることが多い。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン