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2018.06.26 07:00  女性セブン

南極昭和基地の生活模様、隊員同士の衝突や気分転換術

元南極調理人・渡貫淳子さんが南極生活を振り返る

 オバ記者こと野原広子が南極調理隊員30人の胃袋をつかんできた“南極の母ちゃん”渡貫淳子さん(44才)を直撃! 渡貫さんは、2015年に第57次南極地域観測隊の調理隊員となり2017年春に帰国。その後、南極料理レシピを公開したり、料理教室の講師をしたり、企業の商品開発をするなど、幅広く活躍中だ。知られざる南極隊の暮らしとは?

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「昭和の権力者は誰か?」と隊員同士でお酒を飲んだ席で話題になったときの結論は、1番は、暖房を握っているから燃料隊員。で、2番目は調理隊員。ほかの隊員からしてみると、食べるものは調理隊員が用意したものしかないんですから。“権力者”かどうかはわからないけど、8か月目に生鮮野菜が底をついたときは、“隊のお母ちゃん”としてすごく切なかった。

 とんカツや豚のしょうが焼きにキャベツの千切りがつけられないんです。シャキシャキ歯ごたえのある食べ物に飢えるとは想像以上でした。

 まあ、この“お母ちゃん”も怪しいものでね。1年後、次の隊がすいかを差し入れてくれたときは、切り分けながら真っ先に、どんどん自分の口にポンポンと入れてましたけどね(笑い)。

 ある日、ポタリポタリと音がする。何かと思って音のするところへ行くと、雨もり。春が来て氷が溶け出したんです。そうすると、生き物の気配を感じ始める。それまで長いこと、隊員30人以外の動物を見ていないから、朝方、ペンギンの鳴き声がして、飛び出していきたいほど興奮しました。

 そのうち、しょっちゅう昭和基地にペンギンの群れがやってくるようになり、大きなコウテイペンギンが現れたときは、隊員がぐるりと囲んで、まるでアイドルの撮影会。

 カメラは、放っておくと寒さでバッテリーが切れちゃうから、外に出るときは鳥が卵を抱くように、みんな体温でずっと温めているんです。

 南極で暮らす上でもっとも大切なのは、メンタルを保つこと。だから、みんな全力で喜びを見つけました。たとえば、氷山での流しそうめん。傾斜のよさそうな氷山にうまく穴を掘って、そこに麺とつゆと天ぷらを持って出かけていく。

 かと思えば、女性隊員5人でAKB48の『ヘビーローテーション』を振りつけつきで歌い、握手会をしたこともありました。こうして気分転換したり、場を和まそうとしても、けんかになるときはなる。

 私も1度だけ、人前で言われのないことを言われ、長々と言い合いをしたことがある。しまいに私が怒って席を立ったら、翌朝、相手から「昨日はすみませんでした」と謝ってくれました。

 そんなこんなで、どたん場までドタバタと雑務に追われて、感傷にひたる余裕はなかったけど、日本に帰るために飛び立ったヘリから昭和基地を見下ろしたら、この1年4か月は30人全員で作ったんだなと急に思いがこみ上げてきて…。

 泥にまみれた工事現場のこと、仲間とぶつかったこと…いいことなんか一つも思い出さないのに、その一瞬一瞬が今でも愛しくて愛しくてたまりません。

※女性セブン2018年7月5日号

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