最後の章で紹介される芸人は髭男爵。著者本人が「乾杯ネタ」を初めてライブで披露したときのことを振り返っている。この章だけはジャーナリストとしての批評精神は抑え気味で、どこか照れくさそうだ。
「編集者に自分たちのことも書いてほしいと言われて、僕は猛反対したんです。何とか相方のひぐち君の悪口を書くことで真正面からの分析は回避したんですけど……回避できてます?(笑)」
10年前に一世を風靡した髭男爵のギャグ「ルネッサンス」とは、華やかな古典文化の復興を意味する言葉。山田の「ルネッサンス」の掛け声と共に、一時代を築いた一発屋芸人たちの勇姿が読者の脳裏に再び蘇る。
【プロフィール】やまだ・るい53せい/1975年兵庫県生まれ。愛媛大学法文学部中退。1999年にお笑いコンビ・髭男爵を結成。貴族と執事の格好で漫才の合間にワイングラスをぶつけ合う「乾杯ネタ」で2008年頃に大ブレーク。数々のバラエティ番組や10本以上のCMに出演。『新潮45』で連載した「一発屋芸人列伝」が「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)がある。172cm、130kg、O型。
■構成/ラリー遠田(1979年愛知県生まれ。お笑い評論家。『逆襲する山里亮太』(双葉社)など著書多数)
■撮影/大橋賢
※週刊ポスト2018年7月6日号