◆微妙な味わいが分からない時代

 本書は硬派なルポでありながら、読んでいると思わずクスッとしてしまう笑いどころもふんだんにちりばめられている。芸人としてはダサく見えるほど老若男女に受ける分かりやすさを追求するテツandトモの2人の本質を、「演歌」と喝破するくだりのたたみかけるようなスピード感は、まるで漫才を見ているようだ。

「あの章は漫才の台本のテンポ感で書きました……って言いたいんですけど、いかんせん我々髭男爵はただのコスプレキャラ芸人ですから、そんなに偉そうなものでもなくて。ただ、我々の乾杯漫才はテンポ感を重視しているので、その意味では乾杯し続けた成果が出たのかも。行間にグラスが鳴る音をイメージしてほしいですね(笑)」

 それぞれのギャグやネタに対する山田の精緻な分析を読んでいくと、一発屋芸人とはお笑いの世界でそれぞれ新しい「発明」をしているイノベーターなのだということが分かる。しかし、世間では一発屋芸人にそんなポジティブなイメージは一切ない。彼らはなぜこんなに舐められてしまうのか。

「やっぱりオモチャ感でしょうね。すごく安価で大量に流通してしまったから、尊敬の対象にはならないんです。でも、ご本人たちが言うのもダサいから僕が犠牲になって言わせてもらいますが、取材してみて改めて思ったのは、本当に皆さん才能があるんだなっていうことです。それぞれが誰ともかぶっていない新しい発明をしているんです」

 この本で描かれているのは、おとぎ話の結末の「めでたし、めでたし」の後の世界。「一発」が終わっても人生は続く。キャラを捨てて正統派漫才の道に進む者、ロケバスの運転手という副業に活路を見出す者など、それぞれが崖っぷちでもがきながら必死に生きている。

「今の時代、ネットなんかを見ていても、勝っている調子のいい人はみんなで褒めて、ダメな人はさらに叩く、みたいな感じじゃないですか。微妙な味わいみたいなものが分かる舌じゃなくなっているんですよ。そういう意味では、この本は11組の芸人の熟成した人生が詰まった『発酵食品』です。それを味わって頂きたいですね」

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