さらに、4代目「フォレスター」が商業的にグローバルで成功したため、5代目はエクステリアデザインがキープコンセプトだったことも保守的になったというイメージを増幅させた。おまけにいえば「クルマのサイズが大きくなり過ぎた」といった声も。
サイズアップについては、特に初代と比べれば格段に大きくなり、4代目と比較してもさらに若干拡大したのだが、これはスバル車に限らず、各メーカーのセールスの軸足が海外に置かれているため、「日本で乗るには大き過ぎる」といった指摘は、他社のクルマでもよく聞かれることではある。
ましてスバルは販売台数の実に6割以上を米国だけで稼いでおり、米国市場が他社以上に生命線だけに、サイズが大きくなってしまうのは致し方ない点もある。日本では年々、新車販売市場が縮小し、若年層のかなりの人が「クルマは欲しくない、買いたくない」と言うのではなおさら、米国でのサイズを優先せざるを得ない。
スバル側は、「このクラスのSUVは、最小回転半径で5.5メートルを超えるものがほとんどという中で、『フォレスター』は5.4メートルに抑えた、取り回しのよいクルマに仕上がっている。内寸最大、外寸最小の思想で取り組んだ成果」(商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの布目智之氏)と、サイズアップをうまく抑えたと強調する。
ただし、米国市場で強さを発揮するスバルは、サイズが小さめの小型車が主戦場といえる欧州での販売となると、売り上げ規模が似ているマツダやスズキに大きく水を開けられ、「スイスなどの山岳地帯で『XV』(=海外名は『クロストレック』)をたまに見かけるけど、フランスやイタリアでスバルのクルマを見ることはほとんどない」(あるモータージャーナリスト)と言い、世界最大市場となった中国でも販売台数は少ない。
もう1つ、スバルの代名詞になっているのが運転支援システムの「アイサイト」。同社の“ぶつからない安全なクルマ”のイメージを牽引してきたシステムだが、このアイサイトの制御はマニュアル車では難しいとされ、アイサイト搭載はAT車に限られていた。
日本も米国も、いまやAT車比率が圧倒的ということもあって今回、アイサイトが搭載できないのであれば、マニュアル車は見送るという決断になったのかもしれない。ターボ車の設定なしについては、米国での環境規制値クリアの問題などが影響したと解説する向きもある。
最近のスバルはアイサイト以外でも、走り以上に安全面での強化を全面に押し出している印象で、前出の布目氏もこう語っていた。
「(スバル車オーナーは)運転を家族でシェアする方が多いとよく聞きます。そこで今回、ドライバーモニタリングシステムを『フォレスター』に初搭載しました。人の顔をカメラが認識できる技術で、ドライバーが眠気を感じると警告音などで注意を喚起します。
また、運転席に乗り込むと、あらかじめ設定しておいたシートポジションやミラー角度などを自動的に再現しますが、この設定登録は最大5人まで行うことが可能です」
スバルのクルマは他社と比べると、キャンプやバーベキューなどに行く際の足として、家族で楽しむアウトドアシーンをテレビCMなどでも訴求しており、運転を家族でシェアすることが多いということは、他社のクルマ以上に夫人も運転する頻度が高いのかもしれない。
それらを勘案すると、引き続き安全性を全面に打ち出して、ターボのような速さや操縦の楽しさであるマニュアル車の設定など、スバリストたちが考えるスバルらしさは後退せざるを得ないと考えているのだろう。